喧嘩対処法
□届け先は貴方
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午後3時―--
体育館には午前よりもたくさんの人が集まっている。
これが球技大会最後の試合。
あの後、バレーの第2試合目も勝って、バレーの優勝クラスはあたし達2組だ。
男子バスケも第1試合目の対1組には勝って、今から、3組対4組で勝ち上がった4組との試合が始まる。
バスケもバレーと一緒で3回試合を行う。そして先に2勝した方が勝ちだ。
第一試合目が始まった。
これには藤堂も一真も出ないらしい。
自分が試合に出るわけじゃないのに、こんなにもドキドキするのはなぜだろうか。
18,届け先は貴方
約10分間の短い試合。
第1試合目終了の音と共に、歓声がわぁっと湧き上がる。
その歓声は私たち側のもので。
勝った…!!
「勝ったね!やった!」
「ね!!次は平助君とカズも出るから、絶対勝てるね!」
「だね!」
あたしの隣で応援している同じクラスの子の言葉が入ってきた。
そうだ、次の試合には2人共でる。
約5分間の短い休憩が終わって、第2試合が始まった。
平助と一真のナイスコンビネーションでどんどん点を決めていく。
これなら…!!
「うわッ!!」
「一真!」
ピピー!!
目の前で起きていることを自分の中で整理するのに時間がかかった。
ドリブルしながら、ゴール下まで走る一真にわざとかどうかは分からないが勢いよくぶつかってきた相手チームの男。
うまく態勢が立て直らなかった一真はそのまま地面にたたきつけられる。
足首を押さえながらうずくまる一真のもとに一番最初に駆け寄ってきたのは藤堂だった。
「おい、大丈夫か!?」
「ッ…」
どうやら相当痛そうな様子。
「おい、お前…、わざとだろ」
低い声でぶつかってきた男に言う藤堂。その目つきはものすごく鋭い。
「は?何のことだし」
「お前…!!『ピピー』やめなさい」…ッ」
そこで、審判の人が間に入ってきた。
一真に保健室に行くように指示をして、その後は、何もなかったように試合続行。
ぶつかってきた男に、何にも言わないで。
一真が心配になってあたしも保健室に向かった。
―--
「一真…!」
「ん?…おう、沙織じゃん」
「だ、大丈夫?」
「たいしたことねぇよ!ちょっと捻っただけ…じゃ、俺も試合に戻る「駄目です」…山南先生…」
試合に戻る、そう言いながら立ちあがった一真を止めたのは保健室の山南先生。
「確かに、ちょっと捻っただけ、ですがこのまま試合を続ければ大きなけがに繋がります。悪いことは言いません。このままここにいてください。」
そう言って、先生は保健室を出て行った。
「……ちぇッ。つまんねーの。…平助に、謝んなきゃな」
「あ、あたし、藤堂に伝えてくる…」
そう言って、あたしは保健室を出ていこうとした…が、
パシッ
「……ごめん。…此処に、…一緒にいてくんね?」
「ッ…」
―--
ピピー!
第2試合の終了の合図が鳴り響いた。
「……ま、けた…?」
得点番を見てみれば、あたし達のクラスが負けていた。
藤堂の姿を探せば、頭にタオルを被せ、体育館の隅っこに体育座りをしている姿が目に入った。
「…藤堂、」
「…沙織、」
あたしの名前を呼んで顔を上げたコイツの目はちょっと不安そうで、悲しそうだった。
「なぁにしてんの。勝つんじゃなかったの?」
「っるせぇ。」
「こんなんじゃ、一生あたしに笑われるよ」
「…」
「…一真、でれないって、試合」
「…」
「…だから、あの人の分まで頑張って、…勝ってよ、
平助。」
「ッ!!」
再び勢いよく顔を上げたコイツの目はさっきとは違う。ただ驚きしかなかった。
「沙織、今…!!」
「見てるから、ちゃんと。…じゃ、」
―--
『……ごめん。…此処に、…一緒にいてくんね?』
「ッ…」
「…だめ?」
「……知ってる?…藤堂って、本当は凄く寂しがり屋なんだって。」
「え?」
「ある女の子が言ってた。……きっと、今一真がいないからすんごく寂しがってると思う。そんなんじゃ、アイツ絶対勝てないから。あたしが活入れてあげないと」
「…っぷ。あはははは。…そっかそっか。だよな。りょーかい。わかったよ」
―--
だから、…勝って…!!
その願いが届いたのか、彼はどんどんシュートと決める。
そして、ついに…!
ピピー
「か、勝ったぁぁああ!!」
勝った…。
勝った!!
誰か分からないけど、誰かが上のように叫んだのが合図のようにみんなの喜びが聞こえてくる。
「バスケットボールの部、優勝、1年2組!!」
―--
「「「かんぱーい!!!」」」
惜しくも、学年優勝は取れなかった。学年では2位。
焼肉食べ放題券は無理だったけど、校長がカラオケ無料券をくれて、クラスの皆で打ち上げだ。
テンションMAXの皆。
悪いが、あたしはこのテンションにはついていけない。
時間も時間だ。あたしはそろそろ帰らせていただくとしよう。
「あれ?沙織ちゃん…、もう帰るの?」
「はい。…お疲れさまでした」
―--
「沙織!」
「……平助」
部屋を出てちょっとしたら、平助が追いかけてきた。
「あ、あのさ!」
「…ん?」
「名前、呼んでくれてありがとな!!」
「べ、別に…」
「沙織があの時居てくれなかったら、俺勝てなかったと思ってる。ほんとサンキュー。」
ドクンッ
「ッ」
「ん?…どうかしたか?」
「な、なんでもない!…じゃ、あたしもう帰るから」
「おう!また明日な!」
最近、おかしいな、あたし。
やけに心拍数が早くなったり、あいつの笑顔を直視できなかったり。
「……はぁ。」
―--
「…何で、出てこなかったんだ?」
沙織の姿が見えなくなって、そう言えば、隠れていた一真が出てきた。
「…特に意味はないよ」
「嘘つけ。…告白するつもりだったんじゃねぇの?」
「違うよ。…てか、やっぱり沙織のことは好きじゃないみたい」
「…ふぅん?」
「…何だよ、」
「いや…。……相変わらず、嘘下手だなぁ、って思ってさ。」
「…」
「じゃ、俺は先に戻ってるぜ。」
一真を残して、俺は戻った。
「……ったく。本当に平助には敵わなねぇな。」
贈り物は君の思い
(あいつのことが)
(好きなのはたしか。)
(振られるのも、)
(確か。)
―--
球技大会編しゅーりょー。
ヒロインちゃんの気持ちにじゃっかん変化がおきましたね。
平助君は鈍感な気がします。
てか、鈍感です。
で、出来ればコメントもお願いします…!!