喧嘩対処法
□キャッチボールで伝わる気持ち
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「日向さん!そっちいったよ!!」
「え?…うべッ」
「だ、大丈夫!?」
14,キャッチボールで伝わる気持ち
お昼休み。
今日は体育館で女子のバレーと男子のバスケの練習。昼休みの前半を女子がバレーをやって、後半は男子がバスケ。
そして、バレーをやっていたわけだが、2チームに分かれてやった女子たち。相手側にはバレー部の子がいて。そのこのスマッシュがあたしの顔めがけて飛んできた。
すんばらしいスピードと威力をもったそのボールは良い音を立ててあたしの顔に激突。
ふらふらになりながら、1人保健室に向かい、鼻の上に湿布を貼ってもらった。
痛い…、と心の中で思いながら体育館に向かった。
向かうにつれ、聞こえてくるボールが床を当たり弾かれる音。もう男子のバスケをやっているのだろう。
誰にも気づかれないようにそっと体育館に入った。
「わぁ。平助君カッコイイ…!」
「ね、ほんと。」
すぐ隣にいる2人組の女の子の会話が聞こえた。その話に出てきている“彼”に目を向けた。
…凄い。
バスケ部相手に、あんなに互角。どんどんシュートを決めてゆく。
「あッ!取られちゃった。」
「さすがバスケ部。」
その声に、再び試合に目を向ける。
今ボールを持っているのは一真。あ、そっか。あの人はバスケ部か。
藤堂を見れば、悔しそうな顔をして彼を徹底的にマークしている。
結局、36対40で、一真のチームが勝った。
終わったと同時に、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「どんくせぇな」
「……うるさい。」
教室で、1人ポツンと座っていれば、のんびりと体育館から戻ってきた藤堂に言われた。きっとバレーボールが顔に当たったことをいっているのだろう。
「嘘だって。だいじょ「沙織!!、お前大丈夫か!?」」
藤堂が何か言おうとしていたけど、その言葉は一真の言葉によって消された。
「…うん。大丈夫。」
「沙織ってさ、バレー苦手なの?」
「…この怪我を見て分かるでしょ?」
「ははッ そっかそっか。」
爽やかだなぁ。
何か視線を感じる、と思い気になる方を見てみれば、藤堂がじとー、っとこちらを見てる。
「…何よ。」
「…べっつにぃ」
憎たらしいったらありゃしない。
―--
「…何で付いてくんの?」
「だから!付いて行ってるわけじゃねぇっての!俺も帰り道こっちなの!」
「あっそ。」
放課後になり、もう下校の時間。帰り道が一緒の藤堂と、たまたま出会う。
「…ねぇ、ちょっと付き合ってくんね?」
公園前について、彼が言った。
「……別に良いけど」
そう言って、公園に入っていく彼の後ろを付いていく。ベンチに鞄を置いたと思ったら、中からグローブ2個と野球ボール1個を取り出した。
グローブを1つ、あたしに向かって投げた。
「…?」
「キャッチボール、一緒にしてくんね?」
―--
「ねぇ、」
キャッチボールを初めて約5分。
ほぼ無言だったこのキャッチボール。藤堂が何を考えてるのかさっぱり分からない。
そんなことを思っていると、向こうから声をかけてきた。
「何?」
「…沙織ってさ…、一真と仲よかったっけ?」
「…え?…うわッ!」
予想もしていなかった質問に頭が一瞬空っぽになる。次我に返った瞬間には、藤堂が投げたボールがあたしの横をすり抜けた。
「わりぃわりぃ」と謝る藤堂の声を耳で拾いながら、逃げるボールを追いかける。
「…で、仲良かったっけ?一真と。」
「…別に。…ついこの間初めて喋ったけど?」
そう言った後、ボールを投げた。そのボールはポンッと良い音を立ててグローブに捕まる。
「…そっか。」
「……何よ。」
納得のいっていない藤堂の顔を見てると、あたしまでいろいろ気になってしまう。
「…いや、名前で呼ぶ仲なんだなぁ、と思ってさ。…何?好きなの?一真の事」
「はぁ!?な、何いってんのよ!!」
「うわ。ドモるとか怪しいな」
「殴られたい?」
ったく。何を言ってんだか。
「……で、俺のことはいつになったら名前で呼んでくれんの?」
「………気が向いたら、って言ったでしょ?」
「まだ気は向かない、と?」
「……そうよ、」
「……一真に対してはすぐに気が向いたのに?」
「…別に、そういうわけじゃないし。」
いつの間にかキャッチボールは終わっている。って言ってもあたしがただボールを投げていないだけ。
「……なんかさぁ、俺って欲張りかな?」
「何が、」
「………沙織が一番最初に名前で呼ぶ男友達、俺がよかったな、って思っちゃって。」
何故か判らない。困ったように笑う彼を直視できない。体が熱い。心拍数がぐんと上がる。
言葉にならない
(どくん、どくん)
(内側から感じるこの心の音)
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平助君にあんなこと言われたらイチコロだね。←