喧嘩対処法
□私と彼と彼の友達
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5月下旬。
「えーっと、今日のHRでは1ヶ月後にある球技大会の種目決めするぞー。」
6時間目のHR。先生が面倒くさそうに言った。それにつられたように、生徒たちも面倒くさそうに、えぇ〜と不満の声を漏らす。
ああ。どうやら寝れそうにない。
隣のこいつは爆睡しているが。
13,私と彼と彼の友達
それから順調に種目は決まっていく。1人1から2種目。あたしは運動は得意ではない。どちらかといったら苦手な方だ。そんななので、あたしはバレーボールの一種目だけ。
途中から起きた藤堂は運動神経がいい、ということでバスケと野球の2種目だ。
ちなみに、種目は、男子が野球、バスケ、サッカー。女子がバレー、バスケ、サッカー
「各自昼休みとかに練習するように。優勝したクラスには校長が焼肉食べ放題の券をくださるそうだ。ま、頑張れよー」
先生のその言葉にクラスは一気に盛り上がる。単純な奴らめ。
藤堂、アンタ、今までで一番良い笑顔してるよ。
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「よしっ!男子で野球出る奴と、女子でサッカー出る奴は昼休み外なー!」
お昼を食べ終わった時、藤堂が楽しそうな声でそう言った。その言葉に誰1人逆らうことなく了解ー!などと言って大賛成の様子。
…よかった。あたしは違う。
そんな事を思っているのはあたしだけか?
だが、このクラスのテンションについていける自信はない。
昼休み開始のチャイムが鳴ったと同時に、その種目に出ない人たちまで校庭に向かってダッシュ。
クラスには3,4人しかいない。
ま、静かだからいいか。なんて思って、最近買った本を鞄から取り出し、続きを読み始めた。
読み始めて数分。開いている窓から楽しそうな笑い声が聞こえた。ちらっと校庭を見てみれば藤堂達の姿。楽しそうだ。
何故か判らないけど、ちょっとだけ気になった。でもすぐに本に目を移す。
「元気だよなぁ、あいつら。」
そうボソッと呟いたのは、同じクラスの服部一真(はっとり かずま)。通称、カズ。結構藤堂とも仲の良い一般的に言うイケメンくんだ。
彼は野球には出ないのだろう。だが一緒に外に行きそうな人だ。
「あれ?無視?」
さっき言った言葉はあたしに向けられたものなのか?
「え、あ、…ご、ごめんなさい。」
反射的に謝ってしまったあたしを見て彼はハハッと爽やかに笑った。
「一回、ちゃんと日向と喋ってみたかったんだ。」
「…はあ、」
彼は何を考えているのか分からない。悪い人ではないと思うが。
「日向って平助と仲良いよね」
「…そうですか?」
「うん。いっつも喧嘩してるし。」
何だ?ここ最近では喧嘩=仲が良い、に繋がる方程式でもできているのか?
「……仲がいいわけじゃないいですよ。」
「言うと思った。」
「…」
からかわれている。
でも、藤堂みたいに、反発しようという気持ちにはならない。
「…服部くんは、何の競技にでるんですか?」
ここでわざと話を逸らした。なんかあの内容は話していて気持ちのいいものじゃない。
「俺はバスケとサッカー。……てかさ、」
「…なんですか?」
「それだよ!それ、」
「…は?」
それとはどれだ。主語がないぞ。主語が。
「敬語。」
「…敬語?」
「そう。敬語やめようぜ?タメなのにさ。」
「……分かった。」
「それと、“服部君”ってのも。一真、って呼んでよ」
“じゃあさ、俺の事も名前で呼んでよ”
藤堂に言われた言葉が頭の中に浮かんだ。
「…だめ?」
「…別に、良いよ。」
「サンキュ。俺も沙織って呼ぶな!」
藤堂に言われた時は、素直に良いよ、なんて言えなかった。
今思えば、何故だ?
彼の言葉には頷いた。ほんのちょっとだけ抵抗があったが。
彼と藤堂にはなんの差がある?
どちらかといえば、藤堂の方が親しい仲だ。名前で呼んで、と言われれば、どちらかというと藤堂の方が呼びやすいだろう。
それなのに、なぜ…?
そんな事を思っていると、練習を終えたクラスの皆が戻ってきた。
「おう、平助!おつかれ」
「一真、お前も来ればよかったのによ、」
「だって俺野球でねぇし」
やっぱり2人は仲がいいらしい。2人が話している光景をぼーっと見ていれば、
「なんだよ、」
視線に気づいた藤堂が言った。
「別に。」
「あっそ。」
「そう。」
「へぇ」
「ははッ」
意味のわからない、言い合いと言えるか分からないほどの低レベルの言葉を交わしあっていれば、服部…、一真が笑った。
「やっぱり、本当お前ら仲良いな。」
そういう一真に対して、心の中でため息をついた。
「…はっと、…一真、もうそのネタいいから。」
「え、」
「え?」
あたしは一真に言ったはずなのに、一真より先に反応したのは何故か藤堂。
「…何?」
「え、あ…いや。……何でもない。」
「…そう。」
そこで、調度昼休みの終わりを告げるチャイムがなった。
友情、1つ
(必要なもの?)
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服部一真君
球技大会編では重要人物ですね。
気にかけておいてあげてください。