喧嘩対処法

嵐の後には
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「もう、ぜっっったい一人で抱え込まないこと。何かあったら俺に言え。」


放課後、藤堂に言われた言葉。


その言葉に、素直にうなずいた。






10,嵐の後には





「……は?」


次の日も、早く学校に行った。


昨日から下駄箱にゴミなどは入らなくなった。関わらないって言ったから。まぁそんなの無視することにしたけど。だけど、だ。またゴミが入ってる。


あの女は何を考えているのかさっぱり分からない。


「……また入ってんじゃん。」


「…うん。」


いつの間にかいた藤堂はもうあきれ顔。


「ま、俺がいるからさ」


「……うん」


なんか照れる。


―--


「日向さーん。ちょっと来てくれる?」


放課後。さっさと帰ろうと、席を立った時、この時を待ってましたと言うようにあの女はそう言った。


「………無理。」


「は?」


うお、気分良いわぁ。


「…今日用事あるから無理。」


「……今、アンタなにしてるか分かってんの?」


「わかってるわよ。あんたの“お誘い”を断ってる。」


チラ、とまだ席に座っている藤堂を見れば笑いをこらえている。


「良いから来なさい…!!」


「ちょッ」


「日向!」


キレたように、女はあたしの手首をつかんで体育館裏まで連れてきた。


「ッ離してよ!!」


手を思いっきり振り払ったら、女は何かブツブツと言っている。


「…アンタねぇ…、本当に邪魔なのよ!!!さっさと消えて!!……出てきて。」


女の最後の言葉の意味が分からなかった。何だ?幽霊でも呼ぶつもりか?


そんなことを思っていると、何処からか男3人が。きっと3年生だろ。


「……な、にするつもり…」


さすがに怖い。じりじりとゆっくり近寄って来る男たちに寒気を覚えた。


「……貴方を、狂わせてあげようと思ってね。」


一気に鳥肌が立った。この人たちが何をしようとしてるのか分かったから。逃げなきゃ。今すぐ。


「おっと、逃げようとしても無駄だぜ?」


脱走失敗。


どうしよう。怖い。


……藤堂、……助けてよ…。


「そんじゃ、ヤりますか」


「ッや、め…ちょッ…!!離して!!」


「うるせぇなぁ。」


一人の男が上に乗っかってきて、もう一人の男は口を押さえた。


「んッ……」


怖い。怖い。溢れてきた涙をぐっと堪える。こんな奴らの前で泣いてたまるもんですか!


藤堂…!!助けてくれるんでしょ!?頼っていいんでしょ!?


早く来て…!!



「日向!!」


「…!!」


来てくれた…。藤堂…。


「…へ、平助くん…!!これは…その…。」


「…お前ら!さっさとソイツから離れろ!!」


「は!?ガキが生意気言ってんじゃ…ぐっ」


何にもしていなかった1人の男の人が藤堂に殴りかかろうとしたところを、逆に殴り返した。うわ。凄い。


次に、口を押さえていた人、上に乗っかっていた人、の順で藤堂に掛るが、彼はものともせず打ち負かした。


「…へ、平助君…。その……」


一人残された女はなんとか言い訳を考えている様子。


「……もう、コイツに近づかないでくれ。…別に、俺にも近づくな、とか話しかけんなとは言わないから、もう、こいつには関わらないでくれ。」


「…ッ」


口調はいつもの藤堂だが、目つきが全然違う。あたしに言われてるわけじゃないのに、ちょっと恐怖感を感じる。言われた女は目にたくさんの涙をためて去って行った。


あっけな。


「……藤堂、ありが「…ごめん」ちょッ」


たちあがって、お礼を言おうとしたら、抱きしめられたと当時に謝られた。


「……俺がいるからとか、頼って、って言ってくせに、俺…、結局何にも出来なくて…。無力でごめんな?」


「な、何いってんの。藤堂のおかげで、本当に助かったよ。今だって、…来てくれてありがとう。」


「……ああ。」


終わった。もう、終わったんだ。


―--


「じゃ、また明日な。」


「うん。じゃあね。」

あれから一緒に帰って、帰り道が同じ方向だと、まさかの事実。


家まで送ってくれて、家に入ろうとしたら…、


「あのさ!」


「…ん?」


「……名前で…、沙織って呼んでいい?」


「え…、」


何を言われるのかと思ったら…。


「あ、いや…その…、嫌だったら良いんだけどよ…、あ、いやか…。だよな、なんか馴れ馴れしいよな…ごめ「っぷ。…あははは」え…」


「はははッ…あ、あたし何にも言ってないのに…自分で勝手に…あははッ」


さっきの、鋭い目つきをした藤堂と今の藤堂とのギャップがありすぎる。


「……笑った…。」


「え…?」


いや、そりゃあたしだって笑うさ。人間ですもの。


「わ、笑っちゃだめ?」


「あ、いや…そうじゃなくて…。今思えば、俺、お前が笑った時見たことないって思って…。」


…そうだっけ?1日一回は笑ってるつもりだが。


「…いつもそうだったら良いんだけどなぁ。あの無愛想な顔じゃなくてさ。」


「なッ…いつも馬鹿面で笑ってるあんたよりマシ!!」


「は!?」


ったく。いつも一言多いんだから。…あたしもか。



「…で、良いのかよ?名前で呼んで。」


「……どうぞご勝手に。」


「じゃあさ、俺の事も名前で呼んでよ」


「……何で。」


「…名字で呼ばれんの嫌いなんだ。変に距離があるみたいで、他人みたいじゃん?」


「……気が向いたらね」


「なんだそりゃ。……じゃあな、沙織」


「バイバイ、藤堂。」



明日から、また同じ日々の繰り返しか。


ま、悪くないけどね。






距離が縮まる
太陽と陸

(貴方とあたしの距離も)
(縮まりましたか?)


―--



イジメ編終了。

次回から何書こうかな…。








 

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