喧嘩対処法

頼る、って難しい
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「何かした覚えはない」


「うん」


「喋ったこともない」


「うん」


「てか、その人たちが同じクラスだって最近知った。」


「そうなの。」


「…はぁ」


「は?」


何でため息つかれなきゃいけないのよ。




7,頼る、って難しい





あれから少し作戦を練った。って言っても何も思いついてないが。今はまだあたしと藤堂の2人しかクラスにいない。


「そのパターンはなぁ…、お前はそいつらに直接何かやったわけじゃないが、そいつらにして気に食わないことをお前はやってしまってる。」


「うん。知ってる。」


「は!?じゃあお前が“それ”を気を付ければ良いだけだろ!?」


「は?馬鹿?“それ”が分かってたら今あんたに相談なんかしてないし。」



「そ、そっか…。」



一体あの人達はあたしの何が気に食わないのだろうか。



―--



それは、その日の放課後に起きた。こんなに早く起こるとは思ってもなかったのに。



「ねぇ、日向さん。ちょっと良いかしら?」


「……別に平気だけど。」



放課後、今日は日直で書き忘れていた日直日誌を1人教室に残って書いていた。そしたらあたしをイジメてるであろう3人組が現れた。あんた等帰ったんじゃなかったのかよ。


「付いて来てくれる?」


「……ここじゃ駄目なの?」


「ええ。ここじゃ、どうしても駄目なの。1つ不都合なことがあってね。」


「…そう。」


彼女たちに逆らうことなく付いて行った。そこは予想していた通り体育館裏。付いた途端、水を頭からかけられた。



「教室じゃ、水かけられないでしょ?」


「ッ」


高い音域で笑う声が凄く耳触りだ。



「…何よ、その目。」


無意識に睨んでいた。その目線に気付いたリーダー的な女がもう一回水をかけた。



「ッ……で、用件は何?あたしの何が気に食わないの?」


「あら。話がわかるじゃない。……単刀直入に言うわ。もう平助君に近づかないで。」


「…は?」


「聞こえなかった?もう平助君には近づかないで、って言ったの。」


…は?


いや、意味は分かるよ。さすがに。だけど、だ。…は?



「……何で藤堂が出てくんの?」


「…物分かりが悪いわね。あたし、平助君のことが好きなの。いつもいつも平助君と喋ってるアンタが邪魔で邪魔でしょうがないの。」


「…ちょっと待って。アンタ藤堂と付き合ってんの?」


「は?何言ってんの?付き合ってないわよ。まぁ、これから付き合うことになるかもしれないけどね」


いやいや。意味が分からない。

そんな理由であたしをイジメてた訳?

「ふざけないで。アンタと藤堂が付き合ってるなら話は別だけど、付き合ってるわけじゃないんでしょ?それなのに、アンタの勝手な私情であたしを巻き込んだ。自己中もいいかげ…ッ」


そこで、また水をかけられた。反射的に目をつむって、次開いたときには…、

「ッ」

「いい加減黙らないと、血が出るわよ?」

相手はあたしにナイフを突き付けていた。

「いい?もう一回言うわよ。もう平助君に近づかないで。」

「……分かったわよ。」


―--


悔しい、悔しい、悔しい、悔しい!!!


びしょ濡れの状態で教室まで走る。


ムカつくムカつく!!


あーもう。何であたし、





泣いてるんだろう。



「ッ…」


“もう平助君に近づかないで”


それだけ。それだけでしょ?


ただ藤堂に近づかなければいい。話さなければいい。もう関わらなければいい。


それだけ、それだけ。それだけであたしはイジメというものから解放される。


それだけ…?


あたしにとって、藤堂と関わらなくなるのは“それだけ”の一言で片づけられるものなのか?



「ッすいません…」


「え、あ……大丈夫…?って、いっちゃった。」


曲がり角で、人にぶつかった。顔も見ないで小さく謝って走り続けた。




「あれ?総司じゃん。どうしたんだよ。」


「平助。…今女の子とぶつかって…。」


「ふぅーん……って、何でお前そんな濡れてるんだよ。」


「…あれ?本当だ。……あの女の子かな?てか、あの子泣いてた…?」


「…?」



―--



「ッふ……ズッ……ヒック」



どうか、止まって。お願い。


たったこれだけの事で、傷ついてどうすんの?


まだあたしは弱い。もっと強くならなきゃ。1人でも大丈夫なように。誰にも、



頼らなくても
済むように



―--


こんなにスラスラ書けるとは…!!








 

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