喧嘩対処法

不器用な奴らの本当の願い
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「…何だよ、それ」


バレタ。



6,不器用な奴らの
本当の願い





「…答えろよ。何だよそれ。」


「……勝手に見たの?」


絶対、アイツの目は見ない。


「ああ。………今日も、なんか朝早く起きちまって、早く学校行って、上履き履き替えるとき、お前の下駄箱のところふと見たら、ゴミ入ってるし。それ片付けて教室行って、もしかしたらって思ってお前の机の中見てみたらそんなん入ってるし。…お前、イジメられてんのか?」


最悪。最悪だ。もう。どうしよう。絶対、絶対に誰にも知られたくなかったのに。同情とか、可哀そうとか思われるのが一番嫌いなのに。


「……勝手なことしないでよ。」


「え、」


「勝手な事しないでよ!誰かに言ったら許さないから。この事について、何にも聞かないで。関わらないで。」


「そんなこと出来るわけねぇだろ!!」


「ッ!?」



あたしが、どんなに失礼なこと言ったって、絶対に怒鳴らなかった藤堂が、怒鳴った。


「目の前で傷ついてる奴がいるのに、ましてや俺はそれを知ってるのに、知らねぇふりなんて出来るわけねぇだろ!」


傷ついてる?あたしが?…そんなわけない。


「傷ついてなんかない!!こんなの慣れてるから!!」


「…慣れてる……?」


「ッ」


あー、もう。今日のあたしかなり馬鹿だ。何言っちゃってんだよ。



「慣れてる、ってなんだよ…。」



「…別に。」



ダンッ



この教室に鈍い音が響いたと思ったら、目の前には藤堂がいて、後ろには壁があって、横には藤堂の手があって。



「な、なにを…。」


「………慣れてるって…、中学の時も、なのか?」



…何なの?何なのよ……。



「そうよ!中学の時もイジメられてた。でもね、中学の時の方が酷かった。教科書に油性ペンで悪口は書かれるわ、下駄箱には生ごみや虫の死骸。挙句の果てには毎日体育館裏。理由は何だったと思う?“なんとなく”。なんとなく、であたしはイジメられてたの。どう?これで満足?」


「……高校入って、いつから…、」


「今日でだいたい1週間目ってところかしら。」


「…何で…、何で何にも言ってくれなかったんだよ!!」


今まで顔を伏せていた藤堂が顔を上げた。その目は怒っている、というより悲しそうで。何で?何でコイツがこんな悲しそうな顔してんの?



「何で言わなきゃいけなかったの?」


「友達だろ!?」



友達…?


あたしにそんな存在はいない。


「……友達?ふざけないで!!簡単にそんなこと言わないでよ!!」

「じゃあ何だ?あれか?お前は俺のことただの馬鹿で隣の席で、よく喧嘩する同じクラスの奴、とでも思ってんのか?」


「そうよ!悪い!?」


「それが友達っていうんだよ!!」


「ッ」


友達?こいつが?あたしの…?


友達、って。


「…お前、自分では辛くないだとか、悲しくないだとか思ってると思うけど、顔に出てるぞ。」



「…」



「……友達なんだから、ちょっとは頼っていいんだぜ?」



頼る。


頼るって、何?


頼るって、どうやるの?



「…頼る…?」


「ああ。俺的には、頼ってくれた方が、嬉いんだけどな。」


「…頼る、ってどうやるの?」


「え…?」


「頼り方なんか、知らない…。やったことない。」


「っぷ。あははははッ!!」



大きな声で笑う藤堂。前、焼きそばパンを奪い合った時のように、満面の笑顔で。それと同時に、横にあった手はどかされて、一気に解放感が。


「な、何がそんなにおかしいのよ!!」


「い、いや…ッぷ。その…頼ったことないって…。あはははッ」


何なのよ!顔が熱い。なんか凄く恥ずかしい。


「ふぅ。ま、兎に角、俺に相談しろ?頼る、ってことはまずそっから始まる。な?」



そう言って、彼はあたしの頭の上にポン、と手を乗っけた。






「辛いよ」「頼ってよ」
不器用な僕ら

(ドクン、と)
(心臓がはねた)



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平助君かっこいいなぁ。←









 

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