喧嘩対処法

心の奥の奥に閉じ込めた記憶と願い
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「は?何それ、意味分かんない。」


「何がだよ。落ちた消しゴム取ってって言っただけだろ!?」


昼休み、こいつが勉強なんて珍しいと思ってた時だった。消しゴムを落としてしまって、あたしに取ってといった。なんか素直にしたがうのが嫌だったあたしは上のように言った。そしたら予想通り喧嘩ににつながる。

「…うざ。マジ消えろよ。」

「…」


あたしのすぐ横を通った3人組の女子たち。すれ違いざまにそう言われた。あたしにだけ聞こえるように、小さな小さな声で。





5,心の奥の奥に閉じ込めた
記憶と願い





上履きを隠された事件から、一週間ほどがたった。あれからイジメは一向に収まらず、それどころかどんどんヒートアップ。


教科書がなくなったり、くだらない言葉を並べ書かれた紙は、移動教室から帰ってきた度に入っている。下駄箱にはゴミが入っていたり。



ほら、今日も。



「……生ゴミじゃないだけマシか、」


最近はいつも早めに来ている。誰かに、いじめられてると知られたら面倒くさくなるから。誰かに見られる前に自分で片付ければ大丈夫。

入ってるゴミは紙くずやホコリやら。昔は生ごみとか、死んだ虫とか、入ってたからな…。そんなんよりずっとマシ。

良い忘れてたけど、あたしは中学の時もイジメられていた。だから苦手なんだ、友達とか、友情とかいうものが。


今日も、我慢すれば終わるんだ。我慢なんて慣れてるから、大丈夫。大丈夫。きっと。




―--



「…お前さ、なんか最近変じゃね?」


「……あんたよりは100倍正常だと思ってるけど?」


昼休み、視線を感じ、そちらに目を向ければ藤堂がこちらを見ていた。「なに?」といえば、上のように言われた。何なんだ、いきなり。



「そういうことを言ってんじゃねぇよ!…何か、変だ。いつものお前じゃない。」


「………あたしの事をアンタがどれだけ知ってるか、ってのも問題だと思うけどね。」


「…それもそうか。」



そう。あたしのことを知ってる人なんていない。誰1人、心を開いていないのだから。


自分から言葉をふってきたのに、最後の方はどうでもよくなったように言った後、眠そうにあくびをして頭を伏せた。


所詮、こんなものなんだ。




「あ〜、ほんとムカつく。」


「ね、マジ消えてくれないかな。」



あたしをイジメてる人達は大体分かってきた。同じクラスの3人組の女子。地味な子でもなければ、藤堂のように、クラスのムードメーカ的な存在でもない。そんな子たちがあたしに何の恨みを持っている?喋ったこともないよ?


あたしに聞こえるように言うその言葉は、もう何回も浴びせられてきた言葉なので傷つきも何にもしないけど、聞いてて良い気分ではないのは確かだ。



あと2時間もすれば、学校も終わる。




―--



「……あれ、今日はない。」



次の日、今日もいつもみたいにゴミが入ってるのかな、と思ったら今日は入ってない。


もう終わったのか?それはそれで良いが。何か腑に落ちない。


ちょっと疑問に思いながら教室に向かった。




「…藤堂。」


「…」



教室に行けば、藤堂が自分の机の上に座っていた。髪の毛が顔にかかってるせいで、彼の表情は見えない。



「……ずいぶん早いじゃない。今日は雪かしらね。」


「…」



いつもなら、あたしはコイツを馬鹿にするようなことを行けば必ず突っかかるのに、彼は何も言ってこない。


何なんだ。と思いながら藤堂の隣の席の自分の席に向かえばその上にはいつも机の中に入っている嫌味などが書かれた紙が置いてあった。



「ッ」


何で、いつも机の中に入ってるのに…。まさか…!!


バッと効果音が付きそうなほど勢いよく藤堂の方へ振り向けば、彼は少し怒ったような、鋭い目つきであたしを見た。



「…何だよ、それ。」







甦る記憶と願い
(どうしよう、)
(…どうしよう。)










 

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