喧嘩対処法
□高すぎるハードル
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「沙織ちゃーん!一緒にお昼食べねぇ?」
「全力でお断りさせていただきます。」
「そんな固い事言うなってー。さッ!今日は天気良いから屋上で食べようぜ!」
「いや。ホントマジで触らないで。」
あたしはこのチャラ男と戦っているっていうのに、アンタは見向きもしないで他の女子とおしゃべりですか。あ、そうですか。
っざけんなコノヤロー!!!!
37,高すぎるハードル
「……はぁ、疲れた。」
あの後結局強制的に連れてかれ、微塵も楽しくない昼食をとった。いやぁ、ホント彼お喋りだね。うざったいったらない。
約4日前の突然の告白から、高野何とか、って人は毎日あたしの教室に来ては何やら構ってくる。
あれから平助とも喋れずにいる。
てか、彼女があんなチャラ男につかまってたら…何か、…もっと…ねえ?
「…沙織ちゃん、疲れてるね?」
その声に顔を上げれば苦笑いの千鶴ちゃんとあきれ顔の一真がいた。
「……長距離の授業より疲れるよ。」
そう言えば、彼女はまた苦笑いを浮かべた。
「…で、どーすんの?アレとアレ。」
一真が指差すのは、廊下を歩く高野と席で寝ている平助の姿。
「………どうしよう。」
「おいおい。沙織がそれでどうすんの。」
脱力気味にもなりますよ。常にMAXテンションで接してくる高野を毎日相手してみな?マジで、疲れるから。
「……まぁ、まず平助と話すのが第一だな。」
「…だよね。」
――‐
決めました。日向沙織は決めました。今日は絶対藤堂平助と一緒に帰ります。
放課後の時間になり、覚悟を決める。あの男が来る前に言わなければ。
「…へ、いすけ!」
「……何?」
間が合ったけど、声は何時もの平助だった。
「……い、一緒に帰らない?」
そう言えば、彼は一瞬だけ目を見開いて驚いた。でも、すぐに笑顔に変わる。
「いいよ!」
よし。いつもの平助だ。
――‐
今日はお言葉に甘えて家まで送ってもらう事に。
「それじゃ、また明日「ねえ、」…何?」
いつも通り帰ろうとする平助に一言かければ、振りかえり、目を合わせた。
「……その……、この前は…ごめん。」
「え、」
「付き合ってない、って…言っちゃって…。約束したのに。」
恐る恐る目を見れば、彼は「ははっ」と笑った。
「もう気にしてねえよ。」
久しぶりに向けられたその笑顔に、心臓がドクンと鳴った。
「……それで…その事なんだけど…。…嘘吐くのは嫌って言うか…だから…その…。」
そこで、ポケットに入れておいた携帯が鳴った。
「…ごめん。」
携帯を見てみれば、電話だった。でも画面に表示されたのは「非通知」の文字。非通知の場合は出ないと決めていたので、そのまま放置しておいた。
「…出なくていいの?」
「…非通知だったから。」
ちょっとすると、音は鳴りやんだ。
「…で、話の続きだけど…。やっぱり、」
と、そこでまた携帯が鳴った。何!?何なの!?
でも、やはり携帯には非通知の文字。
「……でとけば?」
「………うん。」
通話ボタンを押して、携帯を耳にあてた。
『あ!やっとでてくれたー。』
「………アンタ誰?」
『なーに言ってんだよ!俺俺!高野翔太!」
「な、何でアンタがあたしの電話番号知ってんの!?」
『俺を甘く見るなって―!』
「……てか、もう電話しないで。ホント迷惑。」
『てか、何で先帰っちゃったんだよ。寂しいじゃん!』
「アンタと帰る約束した覚えないんだけど。」
『そんな事いうなってー』
「……今忙しいの。じゃ、切るね。」
『え!?ちょッ!ま「ピッ」
「…はぁ」
ため息をつきながら携帯をしまった。
そして、再び前にいる平助に向き直ったのだが…。
「平助…?」
「………何?」
はい。怒ってるー。
その声が、あまりにも冷たかったから、言葉が出なくなって少しあたふたしていると、
「……何にもないんだったら、俺帰るね。」
「え!?ちょッ!」
すたすたと帰路についてしまった。
また、振り出しに戻ってしまった。
「…な、んで…」
何で、こうもうまくいかないのだろう。
――‐
沙織が悪くない事くらい、分かってる。
アイツ―‐高野翔太ってやつは何なんだ!マジうぜぇ。
きっと、さっきの電話も高野のはず。沙織の態度的に。
沙織がアイツを相手にしていない、ってことくらいも分かる。
でも、俺は素直になれなかった。
ホント、餓鬼。ほんと馬鹿。
きっと、今沙織はそれなりにショックを受けていると思う。
今回悪いのは、完璧に俺。沙織は必死に俺に何かを言おうとしてくれてたのに。その言葉を待っていたはずなのに…。俺から断ち切った。
全部全部、俺の器が小さいせいだ。
越えられない
(高すぎて、)
(てっぺんも見えない)
――‐
次回!このお話終わると思う\(^o^)/