喧嘩対処法

入り混じる
1ページ/1ページ





「久しぶり、沙織ちゃん」


「…お、きた先輩…」


そう言う彼の笑顔は、相変わらず苦手だ。




33,入り混じる






「な、んで…此処に…」


「僕、此処の学校の生徒なんだけど?」


そういう意味で聞いたんじゃないんですが…。


「…大変だねぇ、女の子は。」


さっきの一部始終を見ていたのだろうか、彼はそう言った。

「…ッ」


「そんなに辛いならさ、…やめちゃえば?」


「え、」


「…だからさ、平助の事好きなの、やめちゃえば?泣くほど辛いなら」


「…」


その言葉に、ふつふつと怒りが湧き上がって、「そんなの嫌です」という言葉がすぐそこまできてるのに、何故かその言葉が出ることはなかった。


「……君だって、嫌じゃな「総司?」


その言葉を奪ったのは平助の声だった。


「お、まえ!!何してんだよッ!」


行き成り目の色を変えて沖田先輩に掴みかかる平助。その行動の意味が分からなくて目を見開くだけ。


「…何?」


「お前が泣かしたのか!?」


「は?」


沖田先輩の言葉と目は冷たい。


「だからッ!沙織泣かしたのお前か!?」


「……はぁ。違うけど?」


「…本当か?」


「…ちょっと、沙織ちゃんからも言ってくれない?この馬鹿に。」


「ち、ちがうよッ!沖田先輩は何にも関係なくて…。あたしが勝手に…。」


「そ、っか…。よかった…。」


そこでようやく沖田先輩の胸倉をつかんでいた手を下ろした。



「…てか、沙織ちゃんが泣いてたのって、平助のせいだよ?」


は!!??


「え…?」


「ちょッ!何言うんですか沖田先輩!デタラメ言わないで下さいよ!!」


「……君達さ、見ててホントにイライラするね。」


いつもの笑顔ではなく、ただの無表情。



「……そんなつまらないすれ違い、第3者からしたらホントにムカつくだけなんだけど?」


そう言って、彼は去って行った。


は?何?え?気まずいんですけど。


「……ごめん。」


「…なんで謝るのよ。」


「…俺のせいなんだろ?」


「……ちがうわよ。」


「………ごめん。」



そう言って、彼もまた去って行った。


また、ひとりになった。


――‐

――‐文化祭当日



あっという間に来てしまったこの日。本当なら楽しい気分のはずなんだけどな。


どうも憂鬱だ。



文化祭も後半にさしかかった。劇が始まる時間。あたしは見に行かない。


見たくないから。


暗くなってきた6時。校庭でフォークダンスをする時間。あたしは行かない。


行きたくないから。


そんな寂しいあたしは教室からひとり校庭を見る。


今藤堂は何をしてるんだろう。



「…沙織…。」


「…一真。…どうかしたの?」


いつの間にか、そこには一真の姿が。


「……うん。……沙織に言いたい事があって、」





劇も無事に終わって、俺は王子様役を卒業した。

フォークダンスの時間だ。何人かの子に誘われたけど、全部断った。おどる気がしな方し。


ひとり俺は屋上で校庭を見ていた。


『…平助君、』


『今野…。…どうかしたのか?』


『…うん。……平助君に、言いたいことあって、』




「俺、…沙織のこと好きなんだ」


『私、…平助君の事好きなんだ。』



「『…付き合って下さい。』」



一真にそう言われて、一瞬心が揺れた。


それと同時に、平助のこの前の謝られた時の顔と笑顔が浮かんだ。




今野に言われて、心臓がドクンとなった。

それと同時に、沙織のこの前の泣き顔と、めったに見せない笑顔が浮かんだ。



「…あたし、」


『…俺、』





それぞれの気持ち
(綺麗に、)
(別れるのかな?)


――‐


「」と『』は、場面の切り替えの時にいちいち――‐を入れるのが面倒くさかったので、二種類のかっこを使わせていただきました。


「」の時は、ヒロインちゃんの方の場面、『』の時は、平助君の方の場面に切り替わりましたよー。という意味です。分かりづらくてごめんなさい。



ゴールは目前!次回、この物語の一番の山場、…のはず!!







 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]