喧嘩対処法

埋もれてる、
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何も見えない。




32,埋もれてる、




『沙織の事、しっかり見てみるから。』


ど、ういうこと…?


振ったんじゃなかったの?



「…そ、そういうことだから……その、一真のところには…いく、なよ…」


「え?…ごめ、最後聞こえな…かった…。」


「あー!良い!何でもない!と、とにかく、…今言った事忘れんじゃねぇよ!」


「ちょッ!」


顔を真っ赤にして彼は走って行った。


今は、素直に喜んでいいんですか?



――‐


「一真…!さっきはごめんね…。いきなり…」


「いや、大丈夫だよ。」


教室に戻れば、一真はもう教室に戻っていた。平助も、何事もなかったように劇の練習に戻っている。



「…何、話したの?」


「…え、あ、…いや…。別に…。」


顔に熱が一瞬にして集まった。さっきの平助の真剣な表情が浮かぶ。



「…そっか……」


一真が急に寂しそうに呟くものだから、つい「ご、ごめん…」と謝ってしまった。


「ん?謝んなって!!言いたくねぇ事くらいあるだろ。」


笑ってるつもりなのかもしれないけど、彼は笑えていない。



「…うん。……ごめん。」



――‐



ゴトンッ


休憩時間、一階にある自販機で飲み物を買った。鈍い音を立ててオレンジジュースが落ちてきた。



「……日向、さん…。」


「……何か用?」


あたしの名前を呼んだのは今野さん。平助の相手役の人だ。


彼女の目はあたしが無愛想に聞き返したせいか、少し戸惑っていて。だけど、何処かまっすぐだった。



「……日向さん、…平助に告白したの?」


「…何で?」


「…噂で聞いたの。」


噂って怖い。


「……だから何?」


駄目駄目。無愛想になるな。


「………OK、…されたの?」


「………ううん」


「…じゃ、じゃあ…振られたの?」


「…ううん」


「…か、考え中って「あなたさ…、何が言いたいの?」…ッ」


遠まわしの言い方は嫌いだ。…だからって、ちょっとやりすぎちゃったかな…?


「…あ、あたし…平助君の事が好きなの。」


「…うん。…で?」


「……平助君の事、諦めてほしいの。」


「………それは無理。」


「な、んで?」


「……平助の事が好きだから。」


ドクンッ


自分で言ったくせに、心臓が高鳴って、恥ずかしくなった。


「…てか、そんなやり方じゃないと、駄目なの?」

「…ッ」


「……それともなに?あたしに勝てる気しない?」


「…ッ」


「……悪いけど…。そんなやり方をして彼を手にしたいと思ってる人に、負けるわけにはいかないの。大体、何なの?今時真正面から戦えないの?ばっかみたい。冗談じゃ「パシンッ」


言葉が止まらなくて、言うつもりなんて全然なかったものまでどんどん出てきて。それに我慢の限界が来たのか、彼女は私の左頬にビンタをかます。


乾いた音が、私たちしかいないこの長い廊下に響く。


叩いた本人を睨みつければ、彼女は涙目の状態で一瞬怯んだ。


「最低ッ!!」


「どっちが。」


「あ、あんたなんかに平助君は渡さない!!」


「平助はものじゃないッ!!」


「アンタみたいな最低な人がそんなこと言わないでッ!」



そんな捨て台詞を言って、彼女は泣きながら去って行った。



痛い。イタイ。


叩かれた頬が痛い。胸が痛い。頭も痛い。


手が震える。体が震える。


力が入らなくて、その場にしゃがみこんだ。


「お姫様が王子様の為に泣いてるって言うのに、その王子様は何してるんだろうね?」


その声はちょっと楽しそうにも聞こえて。


「久しぶり。沙織ちゃん」


「…お、きた先輩…」








光もない
(何も見えない、)
(聞こえない)



――‐


アレ、前にもこんな事があったような…。


6話くらい前の最後もこんな感じ…、


あはは。気のせい気のせい。






 

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