夢
□金魚すくいと君との約束
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「あたし、沙織の家寄っていくけど、2人はどうする?」
9時半になり、よろよろ解散だろう、と思ったのか、咲が言った。
「ごめん、あたしもうそろそろ帰らないと怒られちゃうから…、お大事にって言っておいて、それと、これ渡しておいて」
そう言って千鶴が咲に渡したのはべっ甲飴。
「了解。気をつけてね。」
「うん、また学校でね。ばいばい」
小走りで、千鶴は帰って行った。
「で、平助はどうするの…?」
「…俺も行く。」
「そう…。」
会話の少ない中、2人で沙織の家に向かった。
「そういえばさ、沙織の好きな屋台、りんご飴じゃない、っていったよな?どういうことだ?」
「あー、あの子の一番好きな屋台金魚すくいよ。絶対。これだけは補償できるわ」
「…!!!」
絶対、あの2年前会った彼女は沙織だ。だけど、
「なぁんで嘘なんかついたのかしらね。」
そうだ、何で嘘なんかついたんだ?どうして…、
そんなことを考えていると咲の携帯が鳴った。
「…はい。…うん。…えー、だって今から沙織の家…、わかった、分かったよ。はい…うん。…じゃあね」
電話を切った咲の表情は凄くどんよりしていて。
「どうした?」
「…親から。今すぐ帰ってきなさい、だってさ。」
「え、じゃあ、俺も…。」
「ううん。平助は沙織の家行きなさいよ。きっとさびしがってるだろうし。」
「けど、俺沙織の家行ったことねぇし。」
「大丈夫。あのこの家、友達、近所、親戚だったら誰でも許可なしで入ってOKだから」
いや。そういうことを言ってるんじゃなくて。
「家の前までは言ってあげるから、頑張って。」