◆1◇
下駄箱でくつをはきかえ教室に向かうわたし。
気持ちは戦場に向かう兵士。
ガラリと扉を開けると見える、ひときわ目立つ明るい黄色。
「お、おは…『おはよう、黄瀬くん』」
『おはよーっ』
キャピキャピした女の子たちに押し出される。
「お、おはようッス」
黄瀬くんは律儀にみんなに明るい笑顔で返事をする。
それがわたしに向けられたことはない。
なぜなら、まともにあいさつできたことが一度もないから。
でも、わたしは諦めない。
――明日こそは黄瀬くんにおはようって言うぞ。
2011.12.13〜
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