結界師 FBI ペルソナ4

□名前
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"助けて"と助けを求められた火黒。完全変化を解いた羽花は、ソファーに座っている、火黒の着物の袖を引っ張り、不安そうな顔をしていた。


「お前もしかして、…」



「火黒」


火黒が何かを言いかけた時だった。別の声が火黒を呼んだ。声のした方向を見れば、出入り口に白が立っていた。


「なに?」


「少し話がある。来い」


白が去っていく。だが火黒は後を追って、話を聞かねばならない。自分の隣で不安そうな顔をしている羽花に、


「ごめんな」


と言い残して、研究室を出て行ってしまった。





『…火黒さん…』


寂しそうにする羽花を、藍緋は「大丈夫だ」と頭を撫でた。






**
白との一定の距離を保ちつつ、火黒は後を歩いていく。


「紫遠から話は聞いていた。…どうだ、妖混じりは」


「…どうって…」


「戦い方を教えているのだろう?」


「あー……、まだ教えてねぇよ。どんな奴かって、様子見てるからさ」


「お前にしては慎重だな」



火黒は「そうかー?」と言って、クククと笑った。



「なぁ白。何で妖混じりなんかに戦い方を教えなきゃなんねぇの?…烏森の戦いに参加させる気?」


「今はその予定はない。が、ひとりでも多く、戦える奴が必要だろう。黒芒楼も人手不足だ」


「それだけ?…まぁ言っとくけど。戦い方を教えたって、あいつはこの城の、大した戦力にはならないと思うぜ」


「火黒。それはお前の腕にかかっているのだ」



白は足を止めて、火黒を見た。



「…たかが人間に…」


「少し、期待しているよ」



やっぱり俺が、妖混じりを育てるのか。



白はふと笑んだ。
火黒は自分が羽花にすべきことは、やはり戦闘教育だということを改めて思い知った。

はぁと溜め息を吐いた。





と、突然。




『ガオオオォオオ!!!』



羽花の完全変化の声が聞こえた。二度、三度も。バキバキと城の一部が破壊される音も聞こえた。


それともうひとつの気配。



「何かあったのか」


白が、完全変化をした羽花の姿を発見し、そう呟いた。
その、もうひとつの気配に向かって、吠え、捕まえようとしているのが解った。



「ぬあぁあ!!あの妖混じりめ!また私の城を破壊しおって!」


騒ぎを聞きつけた江朱が、ズカズカと白の隣に歩み寄り、ダンッと手すりを叩いた。



「火黒、」


「あいつの教育係だからなぁ。…俺が行かなきゃな」



火黒はタンッと手すりに飛び乗った。と、そこへ、息を切らしてこちらに走って来る藍緋が見えた。




「どうした、藍緋」


「ハァ…ハ…、ちびが…。ちびがまた、実験中の水槽に唸って…、そしたら水槽が内側から割れたんだ。水系の妖だ。多分…ちびが虐めにあっていた…実行二部の奴だと思う」


「…そっか」



白は話の内容を、即座に理解し、「火黒。その妖を半殺しに留めるようにしておけ」と指示をする。
火黒は、「りょーかい」とだけ言い残して、一瞬でその場から姿を消した。



一同、未だに破壊音が聞こえる遠くを見守っていた。









**
黒芒楼の城から大分離れた所。空は黒く、人間界の夜空のようだ。羽花が辿り着いた先は、岩場がゴツゴツと広がり、ざばざばと水の流れる音…大きな滝のような場所だった。


見たことのない場所に、目を奪われつつも、追っていた奴が居ないかキョロキョロする羽花。



水面に近づいた。
まるで底が見えない。
ゆらゆらと、自分の猫又の顔が映る。それから、ヌ…ッと、違うものに変化した。



『!!』


驚いて身を引こうとしたが、ガッと手首を掴まれて、水へ引きずり込まれた。



ザバーン!と水しぶきをあげる。羽花の後を追っていた火黒は、引きずり込まれたのを見て舌打ちをした。






底のない、暗い暗い水中。
人の顔をしていて、手足はカエルのようでとても長い。そして背後から伸びる、何本もの触手。色が緑色で、とにかく、怖い。



羽花は恐怖を目の当たりにして、必死で水中をもがいた。だが、手首を掴む力が強くて逃れられない。



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