結界師 FBI ペルソナ4
□苦渋の決断
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紫遠は羽花の手を繋ながら、藍緋の居る研究室に訪れていた。
「何か用か?紫遠」
「ん、あー…、居ないなら良いんだ」
室内をキョロキョロする紫遠。
藍緋は首を傾げて「誰か探してるのか?」と尋ねれば、手を振りながら去る紫遠が「まぁな」と返した。
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研究室を出てから、色々な所を歩き回った。疲れに足取りが遅くなった羽花に、「おいおい、このくらいでへばるなよなぁ」と呆れ顔をした。
羽花は申し訳なさそうに俯く。
「人間なんだから大目に見てやれよ、紫遠」
「!」
『…!』
突然どこからともなく声が聞こえたかと思うと、一瞬で目の前に現れた。
ニヤリと笑みを浮かべる、火黒だった。
「はぁ…やっと見つけた」
「何?俺のこと探してたの?」
「まぁな…」
「で、何の用なの?」
紫遠はひとつ間を置いて、視線を羽花に向けた。
「こいつに、戦い方を教えて欲しい」
『!』
「…戦い方?」
普段あまり話さない紫遠から、用は何々なのかと訊けば、人間の妖混じりに戦い方を教えろと。意外なことに、笑みを消して驚く火黒。
「アタシも一生懸命考えたし悩んだんだけどさー…。完全変化した時に暴走したら、実行二部じゃあ抑えるだけで手一杯だし…。牙銀とこに預けたって、集団行動が苦手なこいつは、実行一部じゃやっていけないだろうし…」
『……』
「…藍緋の部下殺すゎ仲間殺すゎで有名なお前だけどさ……。そりゃあそんな危ない奴に、ちびを渡す訳はないって考えたんだ…。でもやっぱ、火黒しか居ないんだよね」
「……」
これが考えた結果、と紫遠は羽花の頭を撫でた。
「…一応訊くけど…、戦い方って刀ってこと?」
「いや、刀なのかはまだ解んねぇけど…。戦いの基本から応用まで、ってな」
「うーん…。教えろってことは、俺にその子を預けるってこと?」
「…そういうことになるな」
「いつまで?」
「いつまでって…。ちびがひとりで戦えるようになるまで?」
「…教えろって、命令してんの?」
火黒の立場は、幹部な紫遠より下の部下という位置づけ。命令には従わねばならない。
「そりゃあ、な…。でもお前、命令に従うような奴じゃないだろ」
「…気分かなぁ。ま、引き受けたとしても、誤って殺しちゃうかもよ?」
「そんなこと、アタシが許さないよ」
『…っ』
二人のやり取りに不安になる羽花。
「命令だけど、一応答え聞いとく」
「悪い、俺ガキ無理だゎ。妖混じりってたって人間だぜ?戦い方教えて何になるよ?」
「はい無視ー」
火黒の答えは、拒否。
だが紫遠がもう一押しする。
「幹部の命令は聞いて貰う。この件に関しては絶対だ。絶対にちびを戦えるようにびっちり教え込め!…お前の戦い方だ…責任重大になるからな」
「…責任重大ね…」
拒否した所で、火黒は逆らえない。聞くしかないのだ。
紫遠はしゃがみ、羽花に視線を合わせて言った。
「ちび…ごめんな。お前を捨てる訳じゃない。ただ、いちから戦い方を学んで欲しいから預けるんだ。絶対に自分を責めるな」
『紫遠さん…』
「怖いかもしれないけど、しっかり言うこと聞くんだぞ」
こくん
「何かあったら、また戻って来ても良いからな」
こくん
紫遠は最後に羽花を優しく撫で、繋いでいた手を離した。そして、ゆっくりと元来た道を戻って行く。
振り返る羽花。
「白に許可は取ってんのか?」
「取ってる取ってない関係無しに、何でもやるだろ、お前は」
「……」
紫遠の背中が見えなくなると、羽花は火黒を見上げた。
「はぁ…めんどくせぇな…」
火黒ははぁと溜め息を吐いた。
*