夜空の翼
□焦りに潜む狂気(第14話)
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「う゛お゛ぉい!!邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!」
「よせ、スクアーロ。被害を与えすぎだ。」
標的を逃がさぬように次々と攻撃するスクアーロ。
だが、あまりに被害が大きすぎると計画の妨げになるに違いない。
あー、もう何で戦いになると周りを気にしなくなるんだ、コイツは。
エマルは心の中で悪態をつくとチラリと少年達を盗み見た。
「ひいっ、何なのあの人達〜!!?
すんげーやばいよ!!」
一見、少年たちは何の変哲もない只の中学生にしか見えない。
でも、近くにいるのは 、
(アルコバレーノにランキングフゥ太か……。)
しかも、気弱そうな少年のとなりにいるのは街で噂のスモーキンボムだろう。
少年が平凡であっても、周りが異色すぎる。
「何だぁ、エマル!?てめえは見てるだけかよ。」
「うるせえ、お前と違って状況を的確に判断してんだよ。」
「はんっ、後で嘆いたって知らねえぞ。」
「お互い様さ。」
つまらなさそうなスクアーロにエマルはニヤリと笑う。
どうせ、おいしいトコはオレが持っていくし。
そんなエマルの気も知れず、再度逃げようとするバジルを追いかけるスクアーロ。
続いてエマルもその隣へと降り立った。
その時、
「おい、女子供は避難するぞ。」
女子供を連れて逃げようとするリボーンの姿が目に入った。
なるほど、あいつらは関係ないってわけか。
アルコバレーノも同じファミリーとは戦えない為の行動だろう。
しかし、
「易々と見逃すとでも思ったか?」
「っ!?京子ちゃん!」
逃がすわけにはいかない。
それが、如何なる事情があろうとも 、だ。
「目を瞑っていろ、楽に終わる。」
短刀を逆手に持ち、振り落とそうした。
が、それは少年の情けない声に遮られた。
「きょ、京子ちゃんは何の関係もないんだ!!
これ以上京子ちゃんに酷いことしたら、怒るぞ!!」
哀れ。
何て美しい勇気だろう。
しかしそれは逆にいうと 、素晴らしすぎるぐらいの弱さだ。
エマルは少年の前に歩み寄ると、ガシッと重力に逆らっているその髪の毛を掴み上げた。
「痛っ、痛い!!」
「偽善者ぶるなよ、弱者が。」
一瞬でその場の空気が凍りついた。
口は笑っているが目だけが笑っていないエマルの様子に、誰も口を挟むことができなかったのだ。
…………チッ、
「あいてっ!!?」
掴み上げていた頭を急に地面に落とす。
面白くねぇ、これがボンゴレ十代目か?
こんなにつまらないだけならスクアーロに任せてしまおう。
そう思ったエマルは溜め息を一つつくとクルッときびすを返しスタスタと歩き始めた。
「う゛お゛ぉい、エマル………!?」
「後はお前に任せるさ、スクアーロ。」
片手を興味なさそうにヒラヒラと振りながらエマルは小脇のベンチに座る。
それをスクアーロはまた出たと言わんばかりに盛大な溜め息をついた。