夜空の翼

□単なる思い上がりだとも気づかず(第11話)
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  目が眩むほど輝いているように見える早朝。
エマルは自室の窓に寄りかかりながらボンヤリと外を眺めていた。
つい先日、気づいてしまった自分の想いの丈。
それに気づいてから自分の頭の中を締めるのはザンザスのことばかり。

前までは、幼なじみという認識だったはずなのに。
思わずエマルの口から溜め息がこぼれる。


「何やってんのかなぁ、オレ……。」


昔まではあざ笑っていた人の「恋」という感情。
しかし、今はどうだろうか。
自分は幼なじみに「恋」という感情を抱き、どこぞの少女マンガのように彼を想っては胸がチクリと痛む。

いつからそんな感情を抱いた?
いつから、彼を想い始めた?
考えても考えても、結論は泡となって消えてしまう。


「あーっ!!もう、ダメダメ!計画が成功するまで余計な事は考えないって決めたんだ!!」


パンパンと自分の頬を強めに叩く。
まるで、自分の想いを封じ込めるように。

計画が終わったらザンザスに打ち明ければいい。
そうだ、そうしよう。

エマルはバッと空を見上げると大声で叫んだ。


「オレの、バカヤロオォォォー!!!!!!!」


ハァハァ、少しは気持ちが落ち着いたぞ。


「うししっ、何バカみたいに叫んでんの?もしかしてエマル、鮫病が移った?」


いつの間にか自室に入り込んでいたベルが悪戯気に笑う。
つか、鮫病ってなんだ。鮫病って。
毎度のようにベルにからかわれるスクアーロを哀れに思う。


「なに、もしかして今の聞いてたのかっ!?」


「いや〜?別に王子は何も聞いてないしー。」


だってオレ王子だもーん。と訳の分からない解釈をつけるベルにこのときばかりは思わず殺意が芽生える。
そうさ、コイツは昔からこんなヤツだったさ。
自分で勝手にそう決めつけて怒りを抑える。


「エマルはさ  、」


すると、途端に真剣さを帯びるベルの声にエマルは小さく肩を揺らす。


「ボスの為だけに存在してるって感じ?」


「…………、は?」


予想だにしなかった質問に拍子抜けする。
何言ってんだ、コイツは。
そんな意味を込めた目で見つめてみるとベルはふざける様子もなく淡々と話す。


「前まで目が死んでた筈なのにボスが帰ってきてから生き生きしてる。」


そりゃ当たり前だろ。
ザンザスが帰って来たんだから。
嬉しくないはずがないのだ。


「何か、悔しいなぁー………。」


そう言ってベルは寂しそうに笑いながら部屋を出て行ってしまった。


「何なんだ、あいつ………。」


それは、彼にとって生まれて初めての小さな小さな嫉妬という感情。
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