夜空の翼

□決意と代償(第6話)
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「そういえばさ、ここの学校には最強と謳われる剣士がいるんだろ?」


あれから数週間経った午後。
エマルは教室の机に寄りかかりながらザンザスに喋る。


「………あぁ。」


少々眠たそうに返事をするザンザス。
もともと自分もこの学校にはいい獲物を見つける為に来たのだ。
しかし、その噂の剣士はどうやら各地の剣士狩りで学校は不在が多いらしい。
他にもこの学校で強いと評判の輩は沢山いた。
だが、そんな奴らは既に徹底的に潰してしまったのだ。

面白くない、そう言う風に肩を落とすエマル。
最近、やっとボンゴレ本部での生活にも慣れてきたのだが、やはり面白みがない。

一番の楽しみといえば、毎日の修行だろうか。
幼い頃は制御できなかった炎の力も少しは扱えるようになってきている。
ザンザスはもう扱えるらしいが、あまり炎を表に出そうとしない。
やはり自分と同じでややこしいことが嫌いなのだろう。


すると、何故か先程まで騒がしかった教室が一気にしんと静まる。
それと同時に、鼓膜が破れそうなほどの大声が教室に響き渡った。


う゛お゛ぉい!!!!」


教室のドアに足を掛けながら辺りを見渡す銀髪の少年。
顔立ちは矯正的だが、その目は餓えた鮫のようにギラギラと怪しく光っている。


「スクアーロが……、帰って、来た……。」


「スクアーロ?」


顔を青ざめてそう言う男子生徒にエマルは聞き返す。


「あ、あぁ…。スクアーロは各地の剣士を倒す旅に出ていた筈なのに………。」


「あれが、スクアーロ……。」


ふーん、と言って頭の上で腕を組むエマル。
確かに面白そうなやつだ、とエマルは内心ニヤリと笑う。
しかし、今はまだその時ではない。

エマルは何事もなかったかのように席につくことにした。


「う゛お゛ぉい、てめえらが今噂の御曹司共かぁ?」


すると、不意にスクアーロに話しかけられる。
あちらから近づいてくるのは嬉しいが、少しばかり目を見開く。
スクアーロの席は自分の後ろなのでその確率は高いと言えるが、こいつはどう見ても気安く他人に喋りかけるような奴ではないはずだ。


「あぁ、オレは御曹司とは訳が違うけどな。」


戸惑いながらも、しっかり受け答えをするエマル。
すると、終始無言だったザンザスがようやく口を開いた。


「最強の剣士さんが、オレ達に何の用だ?」


口の端を軽く吊り上げてニヤリと笑うザンザス。
最近、ザンザスの考えていることがよく分からない。
強さを求めていることぐらいは知っている。しかし、まだその先に何かを隠しているようで………。


「オレも混ぜてくれねぇかと思ってなぁ。」


「は?」


鮫のように獰猛な笑みを見せるスクアーロにエマルは口をポカンと開ける。
しかし、ザンザスはいい考えが浮かんだようで予定になかったことを口に出した。


「てめえごときがオレにかなうとでも思ってんのか?」


「そんなことは言ってねぇ。ただお前らが気に入っただけだぁ!!」


さりげなくエマルの肩に腕を回すスクアーロ。
エマルはそれをペシッと叩き落とすと諦めたように溜め息をつく。
もう、ザンザスに任せとこう。
どうせ、自分が手出しできることではないのだから。


「う゛お゛ぉい!よろしくなぁ、御曹司共!」


今日、エマルがただ一つ学んだことは鮫は物分かりが悪いことだった。
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