夜空の翼

□回り始める歯車(第5話)
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チュンチュンと小鳥がさえずり鳴く音。
そんな平和な朝で、ザンザスはまどろみの中体を起こす。
あぁ、そういえば自分はついにマフィアになったのか。
昨日の事を思い出し、ザンザスは辺りを見回す。


「………う、ん……。」


すると、自分の足に何かが当たった。
視線の先には、布団を抱き枕のように抱え、寝返りを打つエマル。
相変わらず、実に呑気な顔をしながら眠っている。
ザンザスはそんなエマルをじっ、と見つめると、興味本位でその柔らかな頬をつねってみた。
しかしエマルはなおも起きる様子がなく、マヌケな顔のまま眠っている。



ーカンカンカンカン!!ー


先程の静けさとは打って変わって耳につんざくように響く朝の予鈴。
今までそんな体験をした事が無かったザンザスはおろか、エマルまで目を覚ます。


「な、なんだなんだ!?」

「…………るせぇっ。」



目を回しながら慌てふためくエマルと不機嫌そうに耳を塞ぐザンザス。

すると、フライパンとお玉を持ったメイドが二人の部屋に入ってきた。


「起きて下さいっ、ザンザス様にエマル様!」


一瞬、何が起きたのか分からなかった。
それもそのはず、何せ目の前にはヒラヒラとしたレースに、ゴスロリ調の服を着た女が仁王立ちしているのだから。


「いくら初日でも早寝早起きは心掛けないといけませんよ!」


それからの二人は見ものだった。
まず風呂に放り投げられ目にも止まらぬ早さで頭を洗われ。
その後今までの自分とは考えられない程の高価な服で身なりを整わせられた。


「ほえー…………。」


エマルは未だに状況が掴めず放心状態。
一方ザンザスは若干驚きながらも相変わらずの不機嫌そうな顔でそっぽを向いている。


「朝食の時間ですよ、お二方。」


今度は優しそうな笑みを浮かべるメイドが二人に話し掛ける。
この屋敷に一体全体メイドは何人いるのだろうか。
エマルは驚きすぎて口角をピクピクと痙攣させる。

メイドはある意味最強だ、と思ったエマルだった。
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