夜空の翼

□変わりゆく世界(第4話)
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最近のザンザスは、少し様子がおかしい。
別にいつもの仏頂面は何の変わりもないのだが、何故か異様に挙動不審だ。
オレがザンザスに日常的な事を喋っていれば、やけにボーっとしているし、
逆にオレを見つめて何か思い詰めている様子でもある。

一体全体、ザンザスはどうしてしまったのだろうか。

オレには到底分からないが、ザンザスもザンザスなりに何か事情があるのだろう。
とにかく、その事はあまりザンザスに詰め寄らない方がいい。

オレはそう思い、隣で昼寝しているザンザスを一度チラリと見る。
すると、


「………エマル。」


今起きたのか、それとも先程から起きていたのか。
多分前者だろうが、ザンザスはオレを寂しげにじっ、と見つめる。


「な、何だよ、ザンザス。」


多少驚きながらも、オレは平静を装う。
ここでザンザスにそんな事を知られたら、余計に彼を寂しくさせてしまうかもしれない。

こう見えて、オレより6つ上のザンザスは意外と繊細な性格をしているのだから。
ザンザスが怒りっぽいのも、悲しみを閉じ込めるためであって、本当の彼は精神的ダメージを受けやすいのだ。
しかも、信頼を寄せている人間には特に。
自慢ではないが自分はザンザスに少なからずとも信頼を寄せられている……、と思う。
だからこそ、オレがザンザスを守ってあげなければいけない。


ザンザスは一瞬オレに何か伝えるのをためらうが、
自分にそんな事は性に合わないとでも思ったのか、こちらをしっかりと見据えて、言った。


「もし、オレが、お前のもとから離れていくと言ったら、どうする。」


多少、いや、かなりびっくりした。ザンザスがそんな事を言うなんて。
それ以前に何だかその言葉が本当になりそうな気がして怖かった。

もし、ザンザスがオレの前から居なくなったらー………。
そんなもの、とっくに答えは決まっている。


「どんな事をしてでも、必ずザンザスの傍にいる。」


オレのその真っ直ぐとした決意に、ザンザスもびっくりしたようで目を少しばかり見開く。
(あ、今の何か可愛い。)

するとザンザスはフッ、と笑った。


「そうか………。」
「そうだよ。」
「そんなんじゃ、悩んでたオレが馬鹿みたいだな。」


その後、ザンザスの口から出た言葉は、予想もしない事だった。

「オレは3日後、ボンゴレに行く。」
「うん。」
「だから、お前もー……、」


ザンザスの言葉は、そこで途切れた。
ザンザスに抱きつきながら、えぐえぐと情けなく泣き始めたオレの頭をポンポンとなでる。


「……何泣いてやがる。」
「だって、だってザンザスどっか行っちゃうんでしょ……!?」
「あぁ。だから、お前も一緒に来い。」
「え………?」


涙をこぼしながらポカンとするオレにザンザスは安心したように言う。


「正直、てめぇを連れて行くかどうか迷っていた。」


でも、と言ってザンザスはオレの背中に腕を回す。


「てめぇと、離れたくねぇ。」


いくらガキんちょのオレでもドキッとする。心臓がバクバク言って、うるさい。

顔を真っ赤にさせて固まっているオレを見てザンザスはぶはっ!と吹き出すと、


「顔、赤くなってんぞ?」
「ザ、ザンザスのせいだろぉー!!」

そんな事を言いながらも、不安だった。
おじさんとおばさんは、果たして許してくれるだろうか。
ある日いきなり来て、好き放題やってまたどこかに行ってしまうオレを、おじさん達はー……。


「大丈夫だ。」
「ザンザス……。」
「お前なら、きっとー………。」
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