夜空の翼
□甘い気持ちに肩を寄せて(第9話)
4ページ/4ページ
「ザンザス………?」
目を覚ませば、望んでいた彼の姿はない。
また、会えなくなってしまうのだろうか。
自分でもそれは有り得ないと思いながらもどうしても不安になってしまう。
エマルはシーツをギュッと握りしめると、ゆっくりと目を閉じる。
懐かしい、大好きなザンザスの匂い。
こうしていれば、ザンザスが傍にいるような感覚がした。
「………エマル。」
突如、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
ーほら、やっぱりザンザスはオレの傍に居てくれる。ー
ザンザスの姿を見た瞬間、そう思い安堵する自分がいた。
「てめえには後で話がある。ー……それと、」
そうザンザスが言いかけた瞬間、大好きな匂いに包まれる。
シーツなどの物ではなく、本物のー……。
「もう、絶対に離さねえ。」
強く抱きしめられながら発せられたその言葉は、エマルの胸をチクリと痛めた。
ー甘い気持ちに肩を寄せてー
(今日ばかりはこの気持ちに任せようとー、)
(オレはザンザスの背中にそっと腕を回した。)