夜空の翼
□誓いは憎しみと共に(第7話)
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ザンザスはすやすやと眠っているエマルの髪に指を通す。
なめらかな肌触りの髪は、エマル特有の香りがする。
自分がこいつに心を開き始めたのはいつ頃からだっただろうか。
自分の中で圧倒的存在になっていたエマルは、いつも屈託のない笑顔を自分に向けてくれていた。
クーデター当日まであと五日。
成功するにしろ、失敗するにしろ、この計画が実行されれば確実に自分の中の何かが変わってしまうだろう。
それまで、どれだけこいつを愛してやれるか。
本当は、こいつに全てを話してしまいたい。
全てを話して、楽になりたかった。
だが、それはこいつを危険な状態に置くことになってしまう。
ザンザスはエマルの頬に手をあてると、ポツリと呟いた。
「……てめえは、オレが必ず守ってやる。」
だからこそ、この計画は誰にも邪魔などされたくない。
目の前にいる幼い少女を守るためにもー。
ザンザスの呟きは、誰にも聞かれることなく溶けていった。
ー誓いは憎しみと共にー
(ザ、ンザス……。)
(必ず、てめえをー、)