夜空の翼
□変わりゆく世界(第4話)
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ー3日後、オレは朝早くからザンザスと一緒にいた。
おばさん達との別れを惜しむのも悲しかったし、何よりザンザスと少しでも一緒に居たかった。
「エマル、お前は………、」
「大丈夫だよ。」
何か躊躇しているザンザスの言葉を遮って、オレはにっこりと笑う。
「どんなに寂しくても、ザンザスが一緒に居るから大丈夫。」
すると、ザンザスのおばさんがオレ達を呼びに来た。
「さぁ、行こう。ザンザス。」
おばさんの目には光なんか灯っていなくて、改めてオレはザンザスの悲しみを想う。
おそらく、ザンザスは自分の名前が嫌いなんだろう。
つい昨日聞いた事だったが、ザンザスの母親はザンザスが手に炎を灯した頃から変わってしまったそうだ。
その時から、ザンザスはマフィアについてみっちりと教えられたらしい。
あなたは九代目の息子だから、と。
正直、今のおばさんの目にもオレは映っていなかった。
おばさんの目に浮かんでいるのは、ザンザスがボンゴレの御曹司になる事ばかり。
当のザンザスは、もう期待なんかしていない様子だったが。
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スタスタ、とオレとザンザスは朝靄の中歩く。
ザンザスは少々不安じみた様子だった。
自分が息子として受け入れてもらえなかったら、とか、
オレを付いてこさせてはダメだったら、とかいろいろ不安が渦巻いているのだろう。
しかし、オレはどんなことがあっても必ずザンザスの傍にいると決めたのだ。
今更、その覚悟を揺るがすわけにはいかない。
「おい、君。」
声に振り返ると、黒いスーツに黒いサングラスを着けている黒ずくめの男が二人。
あぁ、この男達がボンゴレの奴らなんだな、と一目で分かった。
「君が例の九代目の……。しかし、そちらは?」
男の一人が、オレに視線を移す。
サングラスの奥の瞳が一瞬光ったが、男はさほど気にもとめないように視線をずらした。
すると、男達の間から六十くらいだろうか。
マフラーを首に掛けた優しそうな老人が前に出てきた。
「この子は私と九代目の息子……。
次期十代目になるその意味を取って、XANXUSと名付けました。」
おばさんは、九代目であろう老人に、虚ろな目で喋りかける。
今考えれば、ここで気がつくべきだった。
しかし、そんな事を微塵も思わないオレ達は九代目をじっ、と見つめる
「さぁザンザス。炎をお見せ。」
おばさんの言う通りにザンザスは手に炎を灯す。
老人はそれを優しく、しかしどこか複雑そうな表情で見つめる。
「間違いない、君は私の息子だよ。」
気がつけば、老人はザンザスにそう言って優しくマフラーを掛けた。
しかし次の瞬間、九代目はオレを見て目を見開いた。
「君は……!」
終始九代目はオレをずっと見つめていた。
だがやがて、何かに納得したように九代目は失笑を漏らす。
「なるほど……。やはり運命には逆らえないのか。」
意味の分からないオレに、九代目はそっ、と肩に手を置く。
「君も、ついてくるんだろう?」
「…………はい。」