夜空の翼
□黒に染まった世界(第1話)
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「何で助けたんだよ…。」
「ああ?」
街はずれの広い野原でエマルは口を尖らせながらポツリと呟く。
自分は、この少年のことを何も知らない。
なのに何故少年は自分を助けてくれたのだろうか?
「……てめぇは、オレと同じだからだ。」
「え?」
一体全体、どこが同じなのだろうか。
見るところ、身長も少年の方が高いし、
何より似ているところなんか一つもないだろう。
エマルが疑問に首を傾げると少年は自分の手をさしだした。
ーコオオオォ、ー
「っ!!!」
少年の手に灯しだされたのは、自分と色こそ違えど同じ炎ー。
少年は炎を治めると、その赤い瞳でエマルを見据える。
「オレも、てめぇと同じ炎に呪われた存在だ。」
呪われた存在 、
その言葉だけがエマルの頭の中で復唱される。
この少年も自分と同じくつらい日々を送っているのだろうか。
何だか、心が少しだけ痛んだ気がした。
「……てめぇ、名前は?」
「え?」
「名前だ、名前。」
そう言われ、慌てて自分の名を言う。
そう言えば、二人ともお互いの名前を知らなかったのだ。
「エマル、オレについてこい。」
そう言って差し伸べられた手を、オレは生涯忘れることができないだろうー。
ー真っ黒に染まった世界ー
(夜空は憤怒と出会い、その姿を変えていくー。)