お題V
□うたたね
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なんで、こいつの隣はこんなにも安心できるのだろうか。
まるで太陽のように眩しく笑う姿を見つめて、不思議だ、と掛け布団がわりに引きずってきたバスタオルを引き上げる。
「政宗ー眠たいのかぃ?」
「……いや、そういうわけじゃ、ねぇ…」
「そうかぃ?まぁ俺が側にいるからさ、政宗は安心して寝ていいよ」
ほら、隈ができてる。
別嬪さんが台無しだとまたカラリと笑って目の下を撫でる慶次に、自然と口元が緩んだ。
なぜだか慶次がそばにいれば、何の心配もなく安堵に満たされる。
悪夢に魘され眠ることのできなかった雨の夜でも、こいつが側にいるときは眠ることができるようになった。
昼間なんかは太陽の温かさと空調のきいた涼しさ、いつの間にか必要不可欠になっているこいつの温もりがあればどこでだって睡魔に襲われる。
今日もまた例外ではなく、程よく空調の整った部屋でじんわりと攻撃を仕掛けてくる睡魔に襲われていた。
「政宗ー」
「Ah―…?」
少しずつぼやけてくる視界に比例して、回りの音も薄くなっていく。
そんな状況でも、低いテノールだけははっきりと聞こえた。
「好きだよ」
うん、俺も、好きだぜ。
「………みーとぅ」
「あはは、政宗ってほんと、寝てばっかだな」
ゆっくりお休み
ほとんど呟くような形で言った言葉もしっかりと聞き取ってくれたようで、からからと笑いながら大きな手に髪を撫でられる。
その心地良さに本格的に遠くなった意識の向こうで、慶次が柔らかく笑ったような気がした。
きらきらと初夏に向けて太陽が光を放つ。
あたたかな未来を予感させるように。
そんな、穏やかなある日の話。
-END-