お題2
□上目遣い
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砂吐きそうっていうのって、きっとこのことを言うんだよねぇ…
「さすけぇ」
何時にも増して甘ったるい声でなく愛猫。
その何とも言えない愛らしさに、頬の筋肉もだらしなく緩む。
優しく頭を撫でてやると、うるうると潤んだ一つ目が上目遣いに此方をみやった。
「構ってくれよ…?」
「なになに〜?どしたの?今日は甘えたさんだねぇ」
「だって…」
恥ずかしそうに目を伏せてもごもごと何やら口籠もっている。
「ん?」
「アンタが…テレビばっか見てるから…」
真っ赤にほっぺたを染めて、真っ黒の艶のある耳をへにゃん…と垂れさせて。
寂しかったんだ…と消え入りそうな声で呟いたのを聞き逃さなかった。
ちょ、ちょっとちょっとちょっと!!!
何これ何これ何これ!!
めちゃくちゃ可愛いんですけど…っ!!!
捕食しちゃうよ!?こんな可愛いことされたら捕食しちゃうよ!?
1人で口元を押さえておめでたい俺様の脳ミソは危ない妄想を繰り広げだした。
一方政宗はというと、なかなか構ってくれない佐助になんだか泣きたい気分になってきた。
そんなに俺には魅力が無いのだろうか。恥ずかしい気持ちを押し殺して甘えてみても、なかなか構ってくれないとなると流石に心が折れてくる。
「…うック……ヒック……」
「ま、政宗!?」
しまいには泣き出してしまった政宗に妄想に浸っていた佐助はハッと我に返った。
「え!?なに!?どしたの!?」
「ヒック……うぇ…さッす…け…の…ッばかぁ…っ」
ぱしぱしと叩いてくるのをなんとか避けながら自分のせいで政宗が泣いているなんて微塵も思っていない佐助はあわあわと慌て出す。
「な、何で泣いてんのさ〜!!ごめんねっ、俺様のせいだよね!!?」
全くといって乙女心(いや、乙女じゃないけど!!)を理解していない佐助に怒りが込み上げてくる。
「も…、てめ…ッ、な、んざッ…知、るかぁ…ッ!!」
「そんなこと言わないでよーっ!!ごめんね?ほんっとにごめんね!!」
突き放した言い方をした政宗だが必死に頭を下げる佐助が矢張り気になる様で、ちらりと横目に見やる…と言っても僅かに佐助の方が身長が高いため見上げる形になるのだが。
その姿にドクリと佐助の心臓は跳ね上がった。
なんせ泣いてしまったせいで潤んだ瞳、赤く染まった目元と頬。ぷっくりと膨らんだ唇。そのうえ上目遣いときているのだ。
これは襲うなと言うほうが無理だろう。
「グスン……ヒッ、ク……」
尚もしゃくりあげる政宗の頭を撫でてそっと触れるだけのキスを落とした。
「な、に…っ」
「ごめん、政宗が可愛すぎてさ?」
「ふ、ざけ…!お、れは…っお、こっ、て…るんッだ…!!」
キッと睨み付けられるが佐助にとっては痛くも痒くもないというやつである。寧ろ欲を掻き立てられるだけだ。
「何で怒ってるの?俺様、馬鹿だから分かんないや」
にへりとだらしのない笑みを浮かべて政宗の頭を包み込むように抱き締める。
「構えって、言って…だ、ろ…っ」
諦めたようで、政宗は叫ぶように言い放った。
実際の所、早く可愛がって欲しいという気持ちが勝ったというのもあるのだろうが。
ぎゅっと抱きついてすりすりと頭を佐助の胸へすり寄せた。
「あ〜、もぅ!可愛いなぁもう!」
先程の怒りはどこへやら、ここぞとばかりに甘えてくる政宗にとうとう佐助は押し倒した。
「さ、すけ…?」
「構ってあげるからね。今夜は寝かさないよ?」
にっこりと笑い掛けると目下の政宗もまた上目遣いにふにゃんと笑みを返す。
「俺を見てくれんなら、付き合ってやるよ」
いつものように強気な口調で返してくるその声音には甘さが滲み出ていて。
自然と重なった唇もまた、甘かったという。
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