お題
□ベッドの中
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ギシ…とスプリングが軋む。
「なぁチカ。」
ゆっくりと身を起こして隣に寝転がる恋人の名を紡ぐ。
「んぁー?」
「…何でもねぇ…」
「はぁ?」
ただ呼んでみたかっただけなんて恥ずかしくて言えない。
押し黙った俺に訳が分からんという顔をしてこちらをみる元親を無視してゴロン、と自分より遥かに逞しい胸に体をスリ寄せた。
「お、甘えん坊政宗。」
よしよしと頭を撫でてくる大きな手に、ガキ扱いすんなと口を尖らせながらも一つ目は心地よさに細められる。
「何時までこっちに居られるんだよ?」
元親が瀬戸内からこちらへと訪ねてきて早半月程が経っている。
「んー、そだなぁ」
頭を撫でる手はそのままに間延びした声が頭上で響く。
「確かにそろそろ帰らねぇとなぁ」
「…」
帰らなければいいのに。
叶うことはないと分かっていてもそう願わずにはいられない。
黙って発せられる声を待っていると突然ぎゅっと抱き寄せられた。
「まぁ、冬が来る前には帰るとするかな」
「え…」
冬が来るまで。
それは日数では決めていないと言うこと。
寒波が早くくればそれだけ早く帰ってしまうと言うことだが秋が長く続けばそれだけ長く一緒に居られる。
ゆったりと温かい気持ちが胸を満たして、その気持ちを少しでも元親に伝えたくてぎゅう、と抱きつき返したのだった。
「…でもさ」
「なんだ?」
「学校はいいのか?」
「……」
「馬鹿…」
-END-