お題
□今更なこと
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何がこんなにも気持ちを囃し立てるのか分からなかった。
ひらりと翻った陣羽織に視界の隅に残る蒼。
一目見て彼の龍だと分かる容姿だ。そして、それはあまりにも美しすぎるのだ。
そこから目を離すことが躊躇われるほどに、釘づけになった。
最初は好敵手に出会えたことへの気持ちの高ぶりだと思っていた。
けれど瞼の裏に焼きついた美しき竜はそれ以上に俺の心をかき乱した。
竜を、その体を心を自らのモノにしたいと思い始めたのだ。
欲望は大きくなっていくばかりで止まることを知らない。
「Hey.真田幸村。何人のことジロジロ見てやがる。」
「!?申し訳・・・」
「あまりに俺が秀麗すぎて見惚れてたなんて言うなよ?」
くすくすと笑みを零すその唇。
あぁ本当に。
本当に今更だ。
紅く熟れた唇に吸いつきたいと思ってしまうほどに、俺は彼に心を奪われていたのだ。
「何故分かったので?」
「Ah?アンタのことならんでもお見通しだっつの。」
ふわりと花が綻ぶ。
俺はこの花を守りたいのだ。
最初から独り占めして誰の手にも触れられぬようにして、汚れぬようにしたかったのだと、今更ながらに気付いた今日この頃。