お題
□死すらも2人を別てない
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あぁどうか
「政宗殿」
「っ…ク、ヒ…ック」
どうか
「折角の…お顔、が…台無しで、ござ…る」
どうか泣かないでー…
「幸っ…」
「奥州の竜が、斯様な…こと、で…涙して…いかが、なさ…る」
政宗の膝に頭を預けたままふわりと笑って濡れる頬に手を添えれば、ぎゅっとその手の上に手が添えられ強く握りしめられる。
「幸……幸っ」
少しずつ意識が霞み始める中、しゃくりあげる愛しい竜の姿は異様に美しく、愛しさが尚更こみ上げた。
抱きしめてやりたいのに抱きしめてやれない。
体の自由が利かないというのはこの様にももどかしいものなのか。
やり切れない感情を押し込め、ゆっくりと笑みを作ると、もうほとんど機能をなさない声帯をゆっくりと動かした。
「もう…泣か、ないで…れ…それが…は、少し先に、ハ…行くだ…でござ、る」
「もういいっ、もういいから喋るな!!」
頭を振って止めろと叫ぶが、幸村は尚も口を動かす。
「少しの、あ…だ…離れ、て…ま…け…」
「幸村…っ」
「政宗殿、は…泣き虫で…ござる、なぁ…」
小さく笑って頬に添えた手を持ち上げゆっくりと柔らかい髪を撫でた。