短編

□いじめっ子
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住んでいるアパートに帰ると自分の部屋は既に電気が点いていて、そこに人がいることを知らせている。

駆け出したい衝動を抑えてゆっくりと部屋へと向かう階段を上がり、いつものように扉を開けた。

「ゆ…き!」

部屋へ入ると笑顔を満面に散らせた政宗が出迎える。
最近やっと自分の名を紡げるようになった彼はたどたどしくではあるが幸村の名を呼んで抱き付いた。

「政宗」

「…?」

そんな彼の髪を撫でて愛おしそうに目を細めてからゆっくりと政宗を離した。

政宗はというと、キョトンとして首を傾げている。

「失礼」

一言口早に断って彼の細い腕を隠しているシャツの袖を捲り上げた。

「っ!?」

白い肌が露わになった瞬間、幸村は眉根をよせ、政宗は顔を青くして腕を引く。けれどそれを幸村が許すはずもなく腕はより強く掴まれた。

「この傷…どうなさったので?」

そう言って軽く上げられた腕には無数のカッターなどの刃物によって付けられたような切り傷や、内出血により青紫色に変色したりとなんとも痛々しい。

「っ、ぁ…う」

口をパクパクと動かし気まずそうに視線を漂わせる政宗に、なぜだかどうしようもなく苛立ちを覚えその場に無理矢理組み敷いた。

「ゆ…っ、んっん゙!」

乱暴に唇を奪って隅々まで口内を犯す。息も絶え絶えになり隻眼に涙が浮かんだ頃、指先をするりと未だ乾ききっていない傷口へと滑らせてグッと指先に力を込めた。

「ぁ゙、ぅ゙あ゙…っ!?」

途端に走り抜けた激痛に政宗は隻眼を目一杯に見開く。

そこから一筋の滴がこぼれおちたが今はそれを掬ってやる余裕なんてなくて、ただそれをとても綺麗だと思った。

「ゆ…き、…?」

動きを止めた幸村を恐る恐る見上げる隻眼は不安に揺れていて、それでも反らされることはなく真っ直ぐと幸村を映していて。途端に幸村は己の行動を恥じた。

俺は、何をした?


独占欲に駆られて爪を立てて。


これではあの学校の奴らと変わらないではないかっ

なんと愚かしい…

けれどそうは思っても一度起こった衝動は収まるどころか静かに広がっていく。

「政宗殿、」

ワントーン下がった声にピクリと目下の政宗の肩が震え真っ直ぐに向けられていた眼差しには怯えの色が映った。

それに、自業自得だと分かっていてもズキリと胸が痛む。


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