短編
□いじめっ子
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昼食も食べ終わった長閑な昼休み。
そこに似つかわしくない罵声と机が倒れる音が響いた。そして乱雑にドアが開けられる音とそこから駆けていく足音も次いで響いた。
聞こえてくるのは含みのある嘲笑と冷え切った温度だけだった。
「政宗殿ー!一緒に帰りま…って、あれ…?」
その日の授業を終え、ようやく愛しい恋人に会えると意気揚々と政宗のクラスまでやって来た幸村は教室内をぐるりと見まわす。そこにあるはずの姿が無いことに首を傾げた。
「厠にでも行かれたのだろうか?」
ふむ…とキョロキョロと辺りを見回す。どこか時間をつぶしに行ってしまったのだろうか、と探しに行こうと小さく息をついた。
と、そこで何やらクスクスと不快感が募る笑い声が聞こえてきて、何となくその会話に耳を傾けた。
「なぁ、見たかよ?」
「あぁ…伊達だろ?あいつも懲りねぇよなぁ…」
「ホントに…毎回毎回あんな暴力受けて、よく学校に来ようと思うよな」
伊達、という言葉に反応して足が勝手に男子生徒へと向かう。その間にも飛び交う単語に少しずつ自分の中の体温が下がっていくのが分かった。
「政宗殿が如何なされたと?」
楽しそうにクツクツと笑うそいつらの肩を掴んでにっこりと笑いかけた。
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