短編
□逃避行
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「な、何を…」
「俺さ、もう長く無いんだと」
「そんなー…ッ」
ひとり、時間の硲に取り残されたような感覚に陥った。
彼は、何て言った?
「そ、んな…そんな笑えない冗談」
「冗談なんかじゃねぇよ!!」
信じたくないと、どうか嘘であってほしいと震える声で返すが、声量の衰えた声を荒げて政宗が遮った。
「冗談じゃ、ないんだ…冗談なんかじゃ無いんだよ…」
顔をうずめたままそう叫んだ政宗は力無くその場に崩れ落ちた。
慌てて支えるが間に合わず同じようにその場に崩れ落ちる。
2人してへたり込んでいると、華奢な政宗の肩が小さな嗚咽と共に震えた。
「い、や…だッ」
絞り出された声は、今にも消えてしまいそうなほど小さくて。
本当にこのまま消えてしまうのではないかと思うぐらいで。
「俺は…ッまだ、死に…ック、た、く、ない…」
「政宗殿」
「まだ、アンタと…っ、離れ、たくッ無いんだよ…っ!俺は、俺は…っ」
「もういい!」
堪らなくなって大声で遮って腕に力をいれた。
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