短編
□最期
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もう一度、もう一度だけでいいから
アンタに逢いたい
この短い灯火が消える間際に見える景色は、燃えるような紅であって欲しいと思うのは、やはり、叶わぬ夢なのだろうか…?
薄れゆく視界には、どこまでも高い空が広がっていた。
暖かい昼下がりの中庭。
辺りに人の姿は見あたらず、貸し切り状態にある屋上で政宗は仰向けになって空を仰いでいた。
ゆるゆると流れる雲を視線だけで追い、その背景に映る澄み切った青に目を細めた。
「政宗殿!」
「幸村…」
そこに息を切らして現れた最愛の人に、ゆっくりと体を起こしてから苦笑を浮かべた。
「見つかっちまったか…」
「見つかっちまったか、じゃありませぬ!某がどれだけ心配したとお思いか!!」
顔を真っ赤にさせて怒鳴る幸村に対し、怒りの原因である政宗は飄々とした様子で肩を竦めるだけだ。
「そうカリカリすんなよ」
「誰のせいだと…」
「Stop!悪かったって!な?」
「…全く…」
またもや発狂しそうな勢いに慌てて両手を合わせれば、仕様のないお人だ…と息をついて苦笑を浮かべた。
争いのない現代で、もう俺達が刃を交えることは無いだろう。
けれどいつか。
いつか自らの最期が訪れたとき、また俺は願ってしまうのだろう。
―最期に映すのはあの紅でありますように―
とー…
-END-