短編

□穢したい ※
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一点の穢れもない蒼を、ほんの少しだけ汚したくなった。

気品あふれ自信に満ちたその表情(かお)を恐怖と悦楽に歪ませたくなった。

ほんの、少しだけ…









「んん!んーーっ!」
「少し、静かにしてくだされ…人が来てしまいますぞ?」

不適に笑い甘く耳元に囁きかける。

頭を何度も振って抵抗するが、今の幸村にはそんな政宗の姿すらゾクゾクとした快感を齎(もたら)すだけだった。

抵抗を続ける政宗を押さえつけ、己の唇を無理矢理押し付ける。
薄く開いた唇へ舌を滑り込ませるとゆっくりと歯列をなぞった。


政宗は蝋燭の灯に照らされている剥ぎ取られた己の着物を、朦朧とした意識の中呆然と見つめた。

(shit…!んで俺がこんな…っ!)
陵辱を受けなきゃなんねぇんだっ!

グルグルと頭の中を自分の非力さを悔やむ念と、自分をこの様に辱める幸村に対しての憤りが幾度となく巡った。


「んぁ…っ…ぁっ…」


いくら心の中で悪態をついても口から出るのは鼻にかかった甘い嬌声。

そんな自分の声にもう気が狂ってしまいそうだった。

「ぁっ…あ、んっ……あぅ…」
「もう数え切れぬぐらい達したというのに…まだこの様になられる…誠に淫乱なお方だ…」

手についた政宗の白濁の液を、わざと見えるようにして舐めあげ愉快そうに目を細める。
快楽に身を任せ己の下で喘ぐ竜の姿にニヤリと口角を吊り上げた。





高貴な蒼は、濁った紅蓮の紅に染められた。

穢れを知らず空高く飛んでいた隻眼の竜は、狂気に取り付かれた虎に引きずりおろされ地を這いずる下等の獣と化したのだ。


それを自らの手で穢し、落ちる瞬間を見た時の言いようのない高揚感ー…



月すらも顔を出さない闇の中に狂った高笑いだけが響き渡った。





―END―




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