天国
□大切な君
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ことの始まりは、兄さんのプリンを僕が食べてしまったことだった。
冷蔵庫なんてそんなもの、持ち上げられる。
兄さんは普通じゃなかった。
いや、僕がそうさせてしまった。なんて。
後悔してももうおそい。
兄さんは骨を折った。
「ごめん。」
思わず僕は謝った。
「なんで幽が謝るんだよ。」
「ごめん。」
兄さんは僕の頭をなでて、
「あやまんなよ。なっ?」
明るく、笑ってくれた。
それに僕は無表情で
「うん。」
と
返す。
よっし。
そんな顔で兄はイシシと笑った。
兄は常人とは思えないはやさで、回復して。
なのにまた入院を繰り返す。
そんな兄さんに、ある転機が訪れた。
初恋。
だった。
近くの雑貨屋さん。
綺麗な人。
兄さんは大人な女性が好き。
そんな兄さんの横顔を見て、
もやっと、したけれど。
僕はどんな顔をすればいいんだろう。
結局、無表情のまま……
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