TENDER LOVEU

□Chapter 36 -side.taemin-
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「お帰りー。」
「ただいま!」
「テストどうだった?」
「うん、・・・ダメだった。」
「はは、絶対大丈夫だよ。昨日たくさん勉強してたじゃん。」

 ヌナが、僕の髪をなでる。

 僕はこの一瞬を。
 触れる一瞬だけでなく。
 空間を共有している1秒さえ。
 どうしようもなく頑張って、忘れないように。

「今日でテスト期間終わりだよね、お疲れ様。」
「やっと地獄から解放されるー。」
「地獄って・・・」

 リビングのソファへと移動しながら。
 僕は大きく、伸びをする。

 前を歩く彼女の姿も。
 確かに、目に焼き付けて。

 凛としていて。
 白くて。

「じゃあ、今日は何か、楽しいことしようか・・・」

 小さくて。
 美しい後ろ姿。

「・・・テミン?」

 僕は、ソファまであと一歩のところで。
 彼女を後ろから、抱きしめる。

「どうしたの?眠い?」
「ううん・・・」
「じゃあ何?」
「・・・なんでもない。」

 そう告げながら。
 彼女の耳の後ろに、小さなキスを落とす。

 何一つとして。
 特別なものは、要らないよ。

 僕はこの、日常を。
 ありふれた形で。
 普遍的なままで。
 ・・・区切りを、付けたいだけ。

 閉じた瞼の内側に、水分が増す。
 だから、少し強く、目を閉じる。

「テミンー。」
「うん・・・」
「何がしたい?」
「うん・・・」
「答えになってないよ。」

 振り向こうとした彼女を。
 今一度、力強く抱きしめて。

 こっちを、向かないでと。
 その愛しい体を、固定する。

 君との、日々が。
 何より君が、大切だから。

 僕は、きちんと。
 笑顔でいる。
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