LUCIFER
□第5話-side.minho-
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「すみません、点字の本ってありますか?」
図書館の司書に尋ねる。
古びた点字の説明書は、すぐに俺の手元に届けられた。
「借りますか?」
「いや、ちょっと、見ます・・・」
「そうですか。ごゆっくりどうぞ。」
俺は一礼して、空いている席を見つけ、座る。
窓際の席は、
木漏れ日が眩しい。
***
彼女からもらった、四角い白い紙を開くと。
あの日の、あの葉があった。
もう瑞々しさを失って。
端のほうから、徐々に、褐色を帯びているけれど。
あの日の記憶の鮮やかさは。
いつまでも、失えないまま。
彼女の白い肌が。
木漏れ日に晒されて。
俺が触れたいと思った、
あの瞬間。あの鮮やかさ。
失恋、か。
ため息をつきながら、その葉を眺めると。
その葉が包まれていた紙に、俺は何かを見た。
「点字・・・?」
もちろん。
読めるわけもなく。
そして俺は今、こうして。
図書館で、点字の本に向かい合っている。
最後に俺に残した、暗号のような、彼女の言葉を。
知りたい。
その一心で。
初めて見る、点字の一覧。
向かい合いながら、時の経つのも忘れて。