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□風吹けば恋
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体育祭の花形といえば、部活対抗リレーらしい。

とは言っても、野球部やサッカー部みたいな男所帯の体育会系と、茶道部や美術部みたいな女子中心の文化部じゃまるで勝負にならないのはわかりきってる。だけどそれぞれのユニフォームを着て走る姿は華やかだし、なによりチーム一丸となって戦うってのはどの部活にとっても楽しいものらしい。


「げっ、慎吾」

「おー、4番走者?」

「最悪、かなうわけないじゃん」


お手柔らかに、なんてふざけたセリフを言って笑う。まぁ私たちが勝負する前に大きく差が開いてるような気はするけど。
そもそも書道部が野球部とリレーで競うこと自体おかしくないか。


「いいねソレ」

「あ、袴?いいでしょ」

「うん、かわいい」


オレそういうの好き、とか言うのは反則行為じゃないんでしょうか。
慎吾もユニフォームかっこいいねと言えば、そんなこと言っても手加減しねーよと言われた。バレたかぁとおどけてしまう素直じゃない自分が憎い。
そうこうしてるうちに1番走者の人たちがピストルの音と共に走りだす。予想通り陸上部、野球部、サッカー部が競っていて文化部とはすでに大きな差が開いてる。


「やっぱ野球部はやいね」

「毎日走ってるからなー」


呑気な声がうらやましい。慎吾は緊張しないんだろうか。
2番走者にバトンが渡り、トラックのまわりにいる女子たちの歓声が大きくなる。相変わらず上位3つは競っていて、あ、少し陸上部がリードしてるかな。3番走者がスタートして、次の走者は準備を急かされる。

いくつか先のレーンでバトンを待つ慎吾の顔が真剣で、さっきまでの緩い雰囲気はどこへいったのかと驚いた。風を切って走りだした彼にときめく正直な心臓がうるさくてしょうがない。野球部より半周遅れでまわってきたバトンを受け取って、私はスタートを切った。









風吹けば恋









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