君のとなりで、
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昨日から私の家に来ている伊澄くん。
私の両親が久しぶりに帰ってくるという連絡を受けて、二人が会いたがっていた伊澄くんを家に呼んだ。なのに二人は全然帰ってこなくて。
私は伊澄くんがお風呂から上がるのを待っているうちに、いつの間にか寝てしまっていた。
私が寝てしまったあとに亮司くんと奈都子ちゃんは帰ってきたらしい。朝起きても二人は見当たらなくて、また遠くに出掛けるという置き手紙だけが残されていた。
結局私とは一言も会話をすることもなく、また出ていってしまった二人にちょっと呆れた。
伊澄くんはたくさん話をしたらしいけど、どんな会話をしたのか聞いたらなぜか顔をほんのり赤めて逃げられた。
それにしても、亮司くんと奈都子ちゃんは何をしに帰ってきたのか…私は顔すら見てないのに。
『伊澄くん伊澄くん、お菓子作ろう!』
「どうしたの急に…」
亮司くんと奈都子ちゃんの事はもう諦めて、リビングでテレビを見ていた伊澄くんに近づく。隣に腰を下ろして、部屋から持ってきた雑誌を机に開いて見せる。
『せっかくの休みだからなにか作りたいなぁって』
「材料あるの?」
『なにもないから今から買いに行くの』
「あ、じゃあ俺も行くよ」
腕の刺青を隠すような袖の長い服を羽織る彼をじーっと見ていると、私の視線に気づいたのか、少し目線を泳がせながら何?と訪ねてきた。
『刺青増えた…』
「あー…、やっぱり分かる?」
『うん。全身にいれるの?』
「全身はいれない…かな。……たぶん」
伊澄くんの身体の刺青は少しずつ増えてる気がする。
彼の刺青をはじめて見たのはいつだったかな…。刺青いれたことなんて全然知らなかった。
刺青だけじゃない。ピアスも私が知らない間にたくさん開いてた。
耳にいくつもの穴があるのを見たときは、驚きで言葉が出なかったなぁ…
「雛乃は、きらい…?刺青とか…ピアス…」
『伊澄くんだから…きらいじゃない。……お菓子、なに作ろう』
「ぇ、あ………、行きながら考えようか」
無意識に、
(…私もピアス開けようかなぁ)
(そ、それはだめ!絶対だめ!)
(伊澄くんとペアでつけたい…)
(だだだだめです!そうだ、プリン!プリン作ろう!)
(プリン食べたい!)
((…無意識こわい……))