君のとなりで、
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「お、お邪魔します…」
雛乃に呼ばれて訪れた高坂家。正確には雛乃の両親に呼ばれたのであって、本人が来てほしいと思っているのかは分からない。
それでも俺は嬉しかった。好きな子と一緒にいられる、それだけで頬が緩むのが分かる。
「亮司さん達、まだ帰ってきてないね」
家の中は真っ暗で、誰もいないことが容易にうかがえた。
『ごめんね、伊澄くん。せっかく呼んだのに遅くなっちゃうかも…』
「俺はいいんだけど…雛乃は嫌なんじゃない?」
『いつものことだから平気だよ。それに今日は伊澄くんいるから』
…な、なにこの子可愛すぎるんだけど!
たぶん無意識に言ったんだろうけど、雛乃に必要とされてると思うと嬉しい…!
高坂家に来てから時間が経つのはあっという間だった。
テレビを見たり、くだらない会話をしたり…。
もう夜も遅いのに、雛乃の両親はまだ帰ってない。連絡も一切ない。
ソファーに座って雑誌を眺める雛乃をじっと見ていると、視線に気づいたのか顔を上げた雛乃と、ばちりと視線がぶつかる。
『伊澄くん?』
「あ、えっと…ま、まだ帰ってこないみたいだけど…どうする?」
一瞬何のことを言われているのか分からなかったらしい雛乃は、少し首をかしげてから、あぁ、と思い出したように言葉を続けた。
『亮司くんと奈都子ちゃん?もしかしたら帰ってこないかも…』
「え、でも、帰ってくるって連絡あったんでしょ?」
『仕方ないよ…私ご飯作るから食べようか』
少し眉を下げながらキッチンに向かう雛乃に、俺も手伝うと声をかけてついていく。
『今日はシチューだよ』
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