ヒバツナ
□物語の序章
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並盛中学校。
校舎の構造上、他学年と出くわすことはそう無い。
だが、僕は違った。
並盛中を、そして並盛町をも支配下に置く最凶の風紀委員長として、校舎の至る所を見て回る。
誰からも恐れられ、敬遠されがちな僕には、「友達」というものが存在しなかった。
一日のうちでも、一人でいる時間は長く、そして自らがそれを好んだ。
最凶最悪の不良にして風紀委員長―――――
並盛の頂点に君臨する自分は、いつ何時でも、誰よりも強く、気高く在りたかった。
だからこそ、弱くて群れる人間達とは距離を置いてきた。
しかし最近、自分の中で何かが変わりつつあった。
毎朝の風紀チェック。
校門に風紀委員が並び、登校してくる生徒一人一人の服装に目を光らせる。
群れるのが嫌いな僕は、一人屋上のフェンスに寄り掛かって校門を見下ろす。
そこへ、一際騒々しい声が響き渡る。
その瞬間、僕は「彼」を探すために目を凝らす。
銀髪の不良少年と、背の高い野球少年、
そして、その真ん中に、笑顔の「彼」がいた。
「彼」の笑顔を見るだけで、自分も嬉しくなる―――
なぜなのかはわからない。
だが、それがいつしか習慣となり、唯一の楽しみともなっていた。
勿論、この気持ちが何なのかなんて、自分が知るよしもない。
「彼」との出会いが自分を変えたなんて、
そんなこと、僕は知らない。