アンダンテ
□終焉。
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暫くの沈黙の後、ふぅ、と今まで何も言わなかった高杉が息を吐いた。
「言いたいことはそれだけか?銀時。」
高杉の目は、先程とは違う強い光を宿していた。
今思えば、あれは狂気の光だったのだ。
高杉はゆっくりと仲間の死体を見渡した。まるで、その目に焼き付けんとばかりに。
「もう、勝ち負けなんかどうだっていいんだよ。」
高杉はクク、と喉を鳴らして笑った。
「あいつ等にも、同じ苦しみを味合わせてやるんだ…大切なモン失う苦しみをなァ。」
そして、俺を一瞥すると背中を向けた。
「別に終わりにしたきゃ、一人で勝手に終わらせれば良いさ。だが、俺は止まらねぇぜ?」
自分の首が飛ぶまでなァ。
そう言い捨てると、高杉は去ってしまった。
この一週間後、天人の武力に恐れをなした幕府は突然天人側に寝返り、各地で自分達の為に戦っていた侍達を反乱分子として切り捨てた。それは俺達の部隊も例外では無く、鬼兵隊に至っては高杉以外全て打ち首の刑に処せられた。
首だけになった部下達の姿を見た高杉の嘆き様は、今でも忘れることが出来ない。
何故あの時、彼を追いかけなかったのだろうか?
どうせ身を置いている所は同じなのだから、嫌でも会うことが出来るのだが、あそこであいつを引き止めることに重大な意味があったのではと思う。
…あそこで無理にでも、引き止めてさえいれば
(こんな腐った世界なんて俺は要らねェ…全部、全部壊してやる…。)
あいつはあんなに狂ってしまうことは無かったんじゃないか?
何を今更。
俺の中で嘲るように誰かが呟いた。
end
後書き
前の小説が約三か月の月日が流れ、やっとこさ小説第二弾出来ました(汗)どんだけ遅いねん。