アンダンテ

□極彩色の世界
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先生の処刑は生徒達の眼前で行われた。


俺達に見せ付ける為であったのだろう。


お前達も師のような行動をとるとこうなるぞ。と。


俺達には先生の犯した罪など、全く見当が付かなかった。分かっているのは、一週間前いきなり来た幕府の役人に先生が連れて行かれたことと、その先生がボロボロになって、目の前に座らされていることぐらいだ。


目の前、と言っても俺達と先生の間には頑丈な柵があり、触れることすら許されない。


「先生ぇ・・・」


消え入りそうな声で、隣にいた銀時が呟いた。普段なら先生から貰った刀を抱いているその両腕は力なく垂れ、それとは反対に血が出るのではないかと思うほど、両手は固く握り締められていた。


何人かの生徒が先生を助けだそうとした。だが、その度に柵の前に立っている役人に阻まれてしまう。


例に漏れず、俺達も必死になって柵に食い付いた。



けれども、結果は同じ。


あの頃の俺達は本当に非力だった。だが皮肉にも、その非力さ故に助かったのだ。幕府の哀れみとか言う奴で。


泣き叫ぶ俺達の前でゆっくりと執行人が刀を上げた。
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