アンダンテ
□終焉。
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「本当にてめぇは甘い奴だよ。」
そう言って、高杉は俺の後で仰向けに倒れてた天人の喉笛に刀を突き刺した。
ぐえっ、とその天人は蛙が踏みつぶされた時の様な声を出し、暫くもがいて居たが、高杉が突き刺している剣先をねじ切るようにひねると、大きく目を開いてそれっきり動かなくなった。
あーぁ、ヒデェことすんなぁ。といつもの何処か間の抜けた口調で言えば、その深緑を帯びた双眼に睨まれる。
「…何故生かした…?」
高杉が元々低い声のトーンを更に下げて、俺に訪ねた。
何故だって?
眉をひそめて問う高杉を見て、無性におかしくなった。
お前だってもう分かってるんだろう?
高杉の問いを無視して、俺はゆっくりと口を開く。
「なぁ…高杉。周り見てみろよ。」
話ずらしてんじゃねぇ。と怒鳴り掛かってきそうだった高杉を手で制する。
そして、もう一度言った。
「俺達の周りにある死体見てみろよ。」
言い放った瞬間、高杉が歯を食いしばったのが分かった。だがその目は周りをみることはなく、まるで異形の者を見る様にじっと俺を見つめていた。
だが、構わず俺は続けた。
「なぁ…俺達の周りに転がってる死体って大体人間なんだぜ?……確かに、最初の頃は俺達ゃ勝っていたかも知れねぇ。だが今じゃ…」
ふと、俺は高杉を見た。相変わらず高杉は、俺を見続けていたが、その眼光は何処か弱々しくも見えた。
それもその筈。だって俺は、誰もが分かりきっていて、だけど誰も認めたがらない。そういった、ある意味では残酷なことを今、高杉に話そうとしているから。
ゆっくりと空を見上げれば、曇天の空を背景に悠々とカラスが舞っている。
「…もう…」
まるで、肺の中に鉛が流し込まれてるみたいな気分だ。
俺はドロリと言葉を吐いた。
「終わりにしようぜ。」