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□最悪な災厄の始まり
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兄貴はニッコリしたまま言葉を続ける。
精市と京は似てないわけじゃないんだけど、雰囲気が全然違うのよね――いつかの母の言葉が浮かんで消えた。
ああ、俺にこんな恐ろしい表情は作れねえよ。
「お前が俺の声真似できるなんて知らなかったよ。身長もそう変わらないし、顔も似てないわけじゃない。」
「だから…なに。兄貴、どゆこと?」
「明日の試合、俺の代わりに出ろってことだよ。大丈夫、座ってるだけでいい」
そしてこの爆弾発言。
さらっと言ってくれたがムチャだろそれは!
「大丈夫じゃねえよ!?大体、テニスなんてちっさいころに兄貴とやったぐらいで…」
「皆、明日は京の番まで回すことなく圧勝しろということらしい…いいな、弛まず行くぞ!」
「「「おう!」」」
「なんで!?そこ一致団結するとこじゃねえよ!?」
圧倒的俺不利の中、肩に手を置かれた。振り向くと申し訳なさそうな表情の柳さん。今俺は情けない顔をしているであろう。
「…助けて柳さん」
「すまんな。もうオーダーを提出してしまって、変更が効かない」
「裏切り者!」
「フフ、バレたら……分かってるよね?」
「無茶いうなあ!」
幸村京、サッカー部所属。たまに兄に間違えられる。
そして今、久しぶりに幸村精市の弟であることを絶賛後悔中である。
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「だいじょぶだいじょぶ、俺がソッコーで相手ぶっ潰してやるよ!」
「そういう問題じゃねーよ切原…」
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