neta

□臨也にトリッパーだとバレた話
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「取引をさあ、しない?
そんなに身構えなくても。捕って食ったりしないよ。…ねえ葵」

名前を呼ばれて思わずびくりと肩が跳ねた。その反応を目の前の彼は見越していたのだろう、予想通りだといったふうにくつくつと笑った。

「君ほーんとに臆病だよねえ」
「い、一体なんなんですか。ちゃかしに来たんじゃないでしょう」
「そうそう取引の話。
だからそんな身構えるなって。」

一旦区切り、折原臨也は人畜無害そうな笑顔を作った。

「君がこの世界に来た原因、偶然なのか、誰かに仕組まれた必然なのか――君も知りたいだろ?」
「そうですね。…でもそれより、帰りたいです」
「ま、そうだろうね。
そこで俺と手を組まない?」
「ぐ…具体的には、何を」
「簡単さ。俺は君が知りたいことを調べる。君は俺が尋ねる事に正直に答える」
「……あの、尋ねるって例えば」
「その時になればわかるよ」

なんて横暴な。っていうか私が嘘をついたら、

「君が嘘をつくのを俺が見抜けないと思う?」
「イエ、思いませんです」

ひいいい!ダメだ、今ので嘘どころか隠し事もできそうにないのを悟った。絶対に見抜かれる。


「でっでもでも、それにしたって折原さんにメリットがなさすぎで」
「俺がどんな質問をするかも分からないうちに言い切っちゃう?随分と余裕だね、葵。
ま、理由をつけるとすれば俺は異世界にも興味があってねえ。
君の知りたいことは俺の知りたい事でもあるって事。
もしかしたら俺達が異世界と呼ぶそれが死後の世界だったりなんかだったりしちゃうんじゃないかな、と踏んでいる。そうじゃなくても、異世界なんて非現実的存在、面白いだろ?あわよくば異世界進出できる可能性も無じゃない」

異世界の話になった途端にやたら饒舌になった。
どんだけ貪欲なんだよ、この人。

「そんな“ありえない”話を可能にできる可能性を秘めた君がいる。理由はそれで十分。」
「はあ…な、なるほど」

私、そんな大層なもんじゃないんだけどな。
その言葉をぐっと飲み込む。これはチャンスだ、元の世界へ戻る方法を得るための。下手な発言で彼の興味を削ぎたくない。

「その取引に、裏は無いんですね?」
「本当だよ。誓ってもいい。
まあ俺は無神論者だから――セルティの首にでも賭けて誓うよ」



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