neta

□P4長編:1
1ページ/1ページ











数歩歩くと背後からばらばらと複数の足音がする。立ち止まると足音は止み、息を潜める背後の気配。再び歩を進めると、足音は再開。まるで“だるまさんがころんだ”状態だ。しかしチームワークに難があるのか、諍う小声はひっきりなし。
ストーキング、してるつもりなんだろうが。いい加減限界だ。

道を曲がり、すぐそこの電柱におざなりながら身を隠す。すると姿が見えなくなったことに慌てたらしく、落ち着かない足音を立ててそいつらが追ってくる気配。
素早くローファーを脱ぎ、曲がってくる人影が見えた瞬間――思いっきり振りかぶって、渾身の力をもって叩き付けた。ピンヒールでなかったことが悔やまれてならないが、ローファーは平手打ちのような音を立ててクリーンヒット。振動が得物を通して伝わってくる。


「いっ……てえええええ!!」

「ちょ、花村!?って…」


大げさともとれる動作で倒れ込んだ“花村”と呼ばれた男。
もうひとりいた女子が驚いたが、仁王立ち・オブ・立腹な私に気がついたらしく表情がひきつる。ざまあみさらせ、と鼻をならしてローファーを履き…あれ、壊れてる。ガバガバしてる。分離しちゃいけないところが二分されてるよ。
致し方無く靴下でコンクリートを踏みつけて睨みつける。

「数日前からこそこそと。なにかようなの?」

我ながら傲慢である。だがこれでストーキング生活四日目。三日も耐えたのだ。チキンな私はだれにも相談できず三日間びくびくと過ごし、四日目も後半にして恐怖は苛立ちへと変わった。なんで私が怖がる義理があるのだと。
一発喰らわせてやりたい気持ちがむくむくともたげ、ついに先程行動に移し現在に至る。正直、やってしまったあとでやりすぎた感が否めない。やっぱりまずは事情を聞くべきだったかと思い起こすが後悔なんて先にも役も立たたない。もういい、この場では傲慢になりきってしまえ。私はそうするだけの理不尽さを味わったのだと己に言い聞かせる。


「あー、いやあー、そのー」

緑のジャージに制服スカートとラフな格好をした彼女が決まりわるそうに言葉を濁す。周りのお仲間達も同様だ。
淀み始めた空気を入れ換えたのは、灰色の髪色の男子生徒だった。


「マヨナカテレビ、って知ってるか?」







ここで話すのもなんなので、と公園に移動する。公園のベンチで説明をうけること十数分。


「はあ……まあつまり。マヨナカテレビに写った人物は近いうちに失踪して、下手すると遺体になってしまって、今度は私がそのマヨナカテレビに写ってたので、次に狙われるのは私だ、と?」

「そうだ」

真剣な顔つきで肯定されると、私としても困る。
本人達は大真面目な目をして、しかもここ辺りでは見かけない制服を着ていることから離れた街から私を見守るためにわざわざ尾行してきたということになる。そこまでしてただのイタズラ、とは考えにくい。話の詳細もこれまた作り込まれている。なにかのゲームの設定か――とにかく彼らはオカルトに憑かれているんだろう。どう逃げようか考えあぐねる。

「別に、誰かに恨まれる理由もないと思うけど」

「…そうか」

「聞くけど、そのマヨナカテレビに映った人間は抑圧されていた感情を解放してやりたいほうだいなんでしょ?
じゃあ私はテレビの中でなにをしてたわけ」


おい、なぜ一斉に顔を逸らした。








[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ