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□朝七時〇五分の不可解心理(苗木)
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攻めるということは少なからず自分に自信があるということだ。

朝食へ続く道を苗木と並んで歩きながら、ふと思う。
友人になるにも、告白するにも、デートに誘うにも、そこから先へ迫るにも。「断られないだろう」「嫌われないだろう」「受け入れてくれるだろう」という自身の可能性を信じられるからこそ“攻め”の姿勢に移ることが出来る。
その可能性を信じられない人が受身になるわけだ。

「遠和さん?何か考え事?」
「うん。考え事」
「それって何かな」

苗木はぐいぐい訊いてくる。このとるに足らない議題を考え始めたのはそもそも彼が私を朝食に誘ったからで。
この閉ざされた学園内で殺し合いが起きるかもしれないという非常識な極限状況だからこそ、様々なことを暴きたくなるのは普通かもしれない。その心理を察して素直に答える。

「人の自信と行動について。」
「え…難しそうだね。あはは……」

自分で尋ねておいて困り笑いするんじゃない。

「どんな考えなの?」
「人と親密になるには自分の可能性を信じる必要があるってこと」
「ええっと……?それって、誰かと親密になりたいって考えたの?」

そんなこと一言も言ってないんだけど。

「君と舞園サンを見ててそう思ったんだよ。」
「えっ」
「私じゃなくて舞園サンを誘うぐらいの気概を見せなよ。苗木」
「えっ」
「そして二人きりになったら手を繋ぐくらいしても大丈夫だ。君はそれくらい自信をもっても良いと思うぞ。」
「えっえっ」


やや慌ててから、苗木は唐突な話題転換を呑み込んだらしく少し神妙な面持ちになる。
そうして私の指を絡め取った。
どうしてそうなった。







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