neta

□合理的ハッピーバースデー(ジン=キサラギ)
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資料を取りに第四師団に立ち寄った際、衝撃の事実を聞かされた。
興味無さげに資料を捲る姿を凝視する。先ほどの事実を確認するために口を開いた。

「……少佐、昨日が誕生日なのでしたか?」
「ああ」
「おめでとうございました」

ぺらり、また資料を捲る。
そもそも所属師団が違うから知らないのも当たり前だ。
しかし形式的な言葉しか出てこない、気の効いた言葉が言えない発想力の乏しい自分が悲しい。
一応、昨日同期に義理で作ったバレンタインのケーキが大分余ってしまっているが、余り物を少佐に差し上げるのは気が引ける。

「あ、ノエルから何か祝われたのでは?あの子、結構マメですから」
「……凖尉」

クシャア、と資料にシワが走る。

「あの殺人ケーキを思い出せというのか……!」
「ああ…」

全て察する。真面目で優しいあの子の唯一にして致命的な欠点。殺人レベルの料理。

「でも、その様子じゃ食べたみたいですね」
「…食わされた、が正しい。フォーク片手に迫ってきてな……あの汚物めがァ…!」
「あああ少佐!書類が!書類が紙クズになる!!」
「はっ」

少佐が我に帰り、殺気も霧散した。取り直して咳払いをしたいつになくコミカルな少佐に笑いが込み上げる。

「っふふ、災難でしたね」
「笑い事ではない。」
「今は大丈夫ですか?」
「まだ胃が痛む…」
「そうですか……昨日作ったケーキがまだあるので良かったら、と思ったのですけど」

一応何かをプレゼントする意思を見せ、しょうがなく引き下がる。かたちだけ見せる。
最低限の礼儀を見せることで上司との関係を円滑にする。これぞ社会人!

「(どうせいらないだろうし)」
「ほう。貰おうか」
「ほらね……って、え?」
「何を呆けている?貰うと言った」
「えっ…良いんですか?」
「昨日は胃が痛んで何も食べられなかったからな」
「あら…」

恐るべし、殺人料理。
けれどおかげでケーキが捌けるのと、少尉に遅れながらプレゼントもできるので、私としてはありがたい。






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