neta

□Like a feather(N)
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あっ、と思った時には彼の姿は幾百もの羽に覆い隠されていた。
一斉に飛び立つ鳥達。漠然とした恐怖が足先を擽る。鳥達が飛び去った時、そこに彼はいない気がして。夢のように、消えてしまう気がして。

「――…センナ?」

だから低い声が耳に届いた時、心底ほっとした。おおげさだと思うが涙腺が痛い。
たぶんいま、私は情けない顔を晒しているんだろう。彼はといえば無表情の中に驚きを混ぜた瞳でこちらを見ている。髪の毛や服のあちこちに羽を引っ付けて。

「どうしたんだい、そんな泣きそうな顔をして」
「泣いてない」

答えながら、無意識の内に彼の腕を掴んだ自分の手の後処理に悩む。

「……」
「……」

無言が痛い中、そーっと指を放す。
考えてみれば馬鹿な話だ。マジックでもなしに人ひとり消えるわけがない。まさか私がここまで夢現の判別の危うい人間だったとは。
けれど。あの瞬間、本当に消えてしまうと思った。馬鹿な話だとは思う、それでも後悔はしていない。不思議な確信があった。

「君の行動原理は相変わらず実に不可解だね」
「私にも解らないよ。なんでだろうね。君が、」

現実味がないくらい、あんまりに綺麗だから。

「ボクが?」
「…マメパトに連れ去られるかと思った」

…こんな誤魔化し方しか出来ないんだから、本当に痴呆を疑われてもおかしくないかもしれないね。






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