neta

□drr!連載損ない:1
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目の前で、ココアの入ったマグカップが呑気に湯気を立てている。小ぶりなテレビがニュースを流して、女子アナウンサーがこちらに向かって何やら話している。

今、部屋にいるのは私ひとり。
生暖かい生活感のある部屋。
まるで、あたかも私がこの部屋に住んでいるかような錯覚を覚えた。

「ど………」


どこ、ここ。

そうだ。ここは私の部屋じゃない。友達の部屋じゃない。見覚えすらない。
そもそもこの部屋に来るまでの記憶がない。
誘拐?まさか。

混乱を通り越して冷静になった脳内が状況を把握しようと視線をさ迷わせれば、壁に立て掛けてあった全身鏡が私を映していた。

私は制服を着ていた。
どこかで見たような気もする、けれど着たことはない制服だ。

さらに視線を走らせ、湯気立つマグカップの横にあった紙束が目についた。
学校で最もよく見る、A4サイズの手紙。無機質なゴシック体のプリント文字が目に飛び込む。一番上にのっている手紙の見出しを読んだ。


「来良学園、入学のお知らせ――」


そんな、馬鹿な。
浮かんだのは一つの可能性。
その有り得ない可能性を嘲笑しようとして、失敗した。








(知らぬ間トリップ)








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